10万円の格安EVがヨドバシカメラで売っていた? ガソリン車以上に難しい電動車並行輸入の知られざる裏側

■激安10万円の中国製EV 実はヨドバシカメラで販売されていた?

 2020年7月、中国の自動車メーカー『常力電動車』から「世界最安」をうたう小型EV『Chang Li』が発売されており、さまざまなタイプをラインナップしている。4輪の最安値モデルは日本円にして1台約10万円(930~1045ドル)。激安EVとして日本でも話題になった。

 そしてこの激安EVと同じ(多分)シリーズが、ヨドバシカメラで販売されていたことがわかった。現在も公式サイトに残る小型EV「ヴィークルファンVF4」がこのChang Liとウリふたつだったのだ。実際にヨドバシで販売されていたVF4はアリババにて2000ドル前後で販売されているモデルである(日本での販売価格は88万円)。

中国の常力電動車が販売している『Changli』。最安値モデルは日本円にして1台約10万円(930~1045ドル)
中国の常力電動車が販売している『Changli』。最安値モデルは日本円にして1台約10万円(930~1045ドル)
ヨドバシカメラの公式ページではすでに発売終了となっている。常力電動車のデザインとよく似ている(ヨドバシカメラ公式サイトより)
ヨドバシカメラの公式ページではすでに発売終了となっている。常力電動車のデザインとよく似ている(ヨドバシカメラ公式サイトより)

 写真を見比べると非常によく似ているが取り扱い会社に聞いても「常力電動車という会社ではない」との返事。

 中国車の事情通によると「中国ではOEMが盛んでヨドバシで売っているものが常力電動車でもともと製造されていても別会社のブランドとして販売することもあるし、同じ設計者が別会社の設計を担当することも珍しくないのでよく似たクルマがでることもある」とのことなので真相は不明だ。

 なお、この「VF4」は2021年12月28日に販売開始されたが2022年モデルは完売、2023年モデルの予約受付中としていたが、現在サイトは「工事中」となっている。ヨドバシに確認したところ「メーカーのほうで生産を終了したと聞いています」とのことだった。

 そして本題。ではこの中国製の小型EV。いったいどのようにして日本の公道を走れる仕様となったのだろうか? 協定規則100号第2部(R100-02)に基づく、電池の認定制度を実施している一般社団法人 JIMA(ジーマ)に確認したところ、意外な回答をいただいた。

 「R100(2輪の場合はR136)の要件について『軽二輪』扱いのEVは必要で軽自動車検査協会にて確認しますが、『原付』は自治体がナンバー発行するので検査不要のため、不担保となります。

 また、『ミニカー』(1人乗り)登録の車両は道路運送車両法で『四輪の原付』扱いになります。運転するには普通自動車免許が必要ですが、原付と同等になるので電池の認定は不要となります。

 さらに60V未満の低電圧動力用バッテリーは道路運送車両法の解釈によってR100/R136の取得が不要となっています」(一般社団法人JIMA 代表理事 村島政彦氏)

 ヨドバシで販売されていた小型EV(ミニカー登録の1名乗車四輪原付)は、要するに「原付扱いでさらに電池そのものも60V未満の低電圧バッテリーであるため、電池の認証は不要だった」ということになる。

 ちなみに、常力電動車の小型EVは『THE GRUNT』というブランド名でアメリカでも2021年4月頃から販売されている。好調な売れ行きだという。4人乗車が可能で最高速度は40km/h。1充電で約32km走行可能である。

常力電動車「Chang Li」シリーズは、米国ではTHE GRUNTの名前で販売されている
常力電動車「Chang Li」シリーズは、米国ではTHE GRUNTの名前で販売されている

 ヒーターやラジオ、バックモニターも付いている。輸送費や関税など諸費用を入れて現在は8000ドル(約100万円)からの販売だ。アメリカでも通常の四輪自動車ではなく、40km/h以上出せない「低速自動車」としての登録となる。

 中国製小型電気自動車は自動車として登録される日本のEVとは姿、形、衝突安全性や乗車定員など大きく異なるものの、100万円以下で購入ができるならデリバリー用車両としてのニーズは今後増えていくかもしれない。

【画像ギャラリー】世界には魅力的なモデルがたくさん! 日本にも導入希望のEVたち(11枚)画像ギャラリー

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