日本で最も売れている輸入車といえば、長年フォルクスワーゲン(VW) ゴルフが定番だった。ところが今やその座を奪ってしまったのが「MINI」。2018年には2万5983台を売り上げ、10年前の1万2744台から倍増する人気ぶりだ。
面白いのは、比較的高い価格でもきっちり売れている点。ボトムは230万円程度ながら、売れ筋の「クロスオーバー」やスポーツモデルの「ジョン・クーパー・ワークス」など400万円を超えるモデルも珍しくない。コンパクトな車格を考えれば決して安くない価格だ。
よく考えてみれば、日本では「小さな高級車」的コンセプトの車たちは件並み失敗してきた歴史がある。にも関わらず、プレミアムコンパクトのMINIはなぜ売れるのか? 売れ筋モデルからその人気の秘密に迫る!
文:松田秀士
写真:編集部、BMW AG
3年連続輸入車首位! 昨年には大規模改良で刷新
BMWが販売するMINIは、輸入車モデル別新車登録台数で2016年から3年連続でトップを走り続けている。
2018年、1年間の販売台数は2万5983台でトップ。2位のVW ゴルフに約4000台の差をつけている。そこにはターゲットカスタマーを飽きさせない進化のストラテジーが垣間見えるのだ。
近々だと昨年(2018年)、MINIの基幹モデルともいえるMINI 3ドア、MINI 5ドア、MINI コンバーチブルの3モデルにマイナーチェンジが施された。
主な変更点はライティング回りなどを含む内外装のデザインとパワートレーン。パワートレーンでは、JCW(ジョン・クーパー・ワークス)を除くガソリンエンジンモデルに新たに7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が採用されたことと、JCWは8速スポーツATに進化。
また、MINI ONE以外に「MINIコネクテッド」を標準装備している。さらにMINI ONE以外にナビゲーションシステム、ドライビングアシストを標準装備とし、プレミアムスモール・セグメントにおける更なるリードを進めたい狙いがあるのだ。
このあたり、世の中のトレンドを先行する商品改良が光っている。渋滞の多い日本でDCTの投入はいかがなものか? という予想はあったものの、実際にステアリングを握って都内を走ってみると、キビキビしたシフトチェンジと渋滞でもギクシャク感は少なく、なんといっても先進のテクノロジー投入という優越感に浸れる。
MINIの魅力司る定番「3ドア」と新顔「5ドア」の魅力
ここでMINI好きが興味をそそるのが3ドアと5ドアだ。BMWもこの2台のファン層を押さえておくことが必須と判断しているのだろう。この2台に魅力があるからこそクロスオーバーやクラブマンなどの派生車種にも人気が集まるのだ。
MINI 3ドアは、やはりコアなMINI好きに刺さりそう。そういうファンは「クーパー」に目が向くもの。クーパー 3ドアモデルに関して今回のトピックは7速DCTの採用だろう。
しかし、それ以外に各モデルも含め試乗していて感じるのは、ボディや足回りにも改良が施されている気配がして仕方がない。こんなにボディが堅剛なフィーリングだったっけ? こんなに乗り心地がしなやかだったっけ? こんなに室内が静かだったっけ? と感じるのだ。
とにかく、荒れた路面を走行しているときの室内静粛性が改善されているように思える。室内音を説明すると、音というものは振動によって発生するものだということを知っておく必要がある。
試乗中ずっと感じていたのはボディが非常に堅剛になっている、ということだった。たとえば路面の凸凹を通過するときに、その凸凹が切り立っていればいるほどにサスペンションを突き上げ、その衝撃がボディに伝わり、フロアなどの平面の部分をシンバルのように振動させ音を発生する。いわゆるフロアなどボディの二次振動というものだ。この二次振動をあまり感じなくなった。
そして室内の静粛性が向上しているように感じるのだ。これはトランスミッションをDCTに置き換えたことで、マウント周りの改良が影響しているかもしれない。実際に他メーカーでもエンジン&トランスミッション周りの変更で静粛性が良くなったモデルがあったのだ。
搭載される1.5L直列3気筒ターボエンジンは1480~4100回転で220Nmを発生する。車重は1240kgと軽量だから、その走りは必要十分なものだ。3ドアMINIらしいデジタルなハンドリングが楽しめる。
そしてライトなMINI好きに嵌りそうなのが5ドアの「MINI ONE」。
こちらは同じ1.5L直3ターボでも102ps/190Nmとクーパーに比べて若干パワーダウンさせ、エコ性能を狙っている。それでも1380回転で既に最大トルクの190Nmを発生しているので、それほどストレスなく走ってくれる。
旧モデルの1.2L直3ターボエンジンに比べると、3気筒特有の振動感も少なくなり走りに高級感がついてきたように感じる。
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