乗り替え需要終了か? アクアの販売急落した理由は3つあり!!
1つ目は、トヨタ自動車東日本岩手工場における生産の滞りだ。アクアに限った話ではないが、新型コロナウイルスの影響で、アクアの生産ラインは、数日にわたり稼働を停止している。日程は少しさかのぼるが、岩手工場は2022年3月17日の福島沖地震の影響も受けた。
アクアの登録台数が下がった2つ目の理由は、先代(初代)モデルからの乗り替え需要が一段落したことだ。先代アクアは2011年に発売され、当時はコンパクトなハイブリッド車が今に比べて少なかった事情もあり、絶好調に売られた。2013年と2015年は、アクアが国内販売の総合1位になり、2014年も小型/普通車の1位になった。
それ以降も先代アクアの販売は好調だったから、国内の保有台数も多い。そのために現行型が2021年7月に発売されると、先代型からの乗り替え需要が数多く発生して、コロナ禍に見舞われながら1カ月の登録台数が9000台近くまで上昇した。この乗り替え需要が落ち着いて売れ行きも下がった。
3つ目の理由は、今のトヨタには、コンパクトなサイズを含めてハイブリッドが豊富に用意されることだ。アクアのほかにヤリスハイブリッド、車内の広いミニバンではシエンタハイブリッド、SUVではヤリスクロスハイブリッドとライズハイブリッドがある。コンパクトなハイブリッドの選択肢がここまで増えると、アクアを選ぶ必然性は薄れる。
そしてトヨタのコンパクトなハイブリッド同士は、価格も近いので、互いに競争する。特に今のトヨタでは、すべての店舗が全車種を扱うから、従来以上にトヨタ車同士の競争が激しくなった。
アクアと同じようなことがプリウスにも当てはまる。ハイブリッドが先進的な環境技術とされていた時代には、遠方から見てもスグに識別できるプリウスのようなハイブリッド専用車が注目された。
しかし今は違う。他社製品を含めて、ハイブリッドは珍しい存在ではない。敢えてハイブリッドであることをアピールするメリットも薄れ、ハイブリッドのみを搭載するアクアやプリウスの注目度と売れ行きは、以前に比べると下がってきた。
このようなアクアの販売下降を、トヨタの販売店ではどのように見ているのか。以下のように返答された。
「以前のヴィッツと、今のヤリスを比べると、外観から内装まで大幅に変化している。そのためにお客様に注目されやすい。しかしアクアは、先代型と比べて外観の変化が目立たない。実際に運転すると、現行アクアは居住性や乗り心地がヤリスハイブリッドよりも快適だが、そこはあまり知られていない。またアクアの価格は、ヤリスハイブリッドよりも少し高く、この点も人気に影響した」。
パーツの供給状況で販売ランキングに影響あり? 今後はどうみていくべきか
アクアはヤリスハイブリッドに比べて車内が広く、走行安定性と乗り心地も上まわる。100V・1500Wの電源コンセントを全車に標準装着するなど、装備も充実させた。これらの内容の違いを考えると、アクアはヤリスハイブリッドよりも割安だが、法人などが使う場合は価格自体の安さが大切だ。ヤリスハイブリッドGが213万円、アクアGが223万円という価格差で、前者が選ばれることもある。
以上のように2022年1~4月の国内販売台数を見ると、アクアの売れ行きが時間の経過に伴って下がっているが、今後の動向は分からない。滞っていたパーツの供給が一時的にでも解消されると、生産も戻って登録台数が増える。この販売増加が一過性で終わり、再び下がることも考えられる。
通常であれば、登録台数や届け出台数は、その車種の人気を反映させている。決算期に増えて翌月は減るといった時期的な変動を除くと、販売ランキングの順位と対前年比には、必ず売れ行きを左右する理由が隠されている。
しかし今は、パーツなどの供給状況も、販売ランキングの順位が変わる。必ずしも人気を反映させるとは限らない。そうなると毎月公表される販売データも、3~6カ月の平均でとらえる必要がある。パーツなどの供給状況により、人気度を知るうえでは意味のない月々の細かな変動が生じるからだ。今は販売ランキングを見るときにも、従来とは違う注意をせねばならない。
【画像ギャラリー】売れ筋カテゴリーで低迷するアクアと、選択肢が豊富なトヨタのコンパクトハイブリッド車たち(24枚)画像ギャラリー
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