注目を集めているクラウンのフルモデルチェンジ。そのなかでも話題になっているのが、これまでFRを貫いてきたクラウンがFFになるということだ。
そこで歴代クラウンファンからは「FF化されるクラウンは“なし”や」「べつにクラウンじゃなくてもいいでしょ」といったネガティブな声が多く見られる。どうしてFRじゃないクラウンには、これほど拒否反応が起こるのか?
ここではFRにこだわったほうがよいこと、FFにしたほうがよいこと、といった利点と欠点を踏まえつつ「FFクラウンどうよ?」という考察を進めてみようと思う。
文/松田秀士
写真/TOYOTA
CG/ベストカー編集部
■クラウンはかくあるべし!? これまで貫いてきたFRだと生まれるメリット
まずはFRにこだわるとよいこと。
FRはフロントにエンジンを搭載して後輪で駆動する。このためエンジンの後ろに直結されるトランスミッションから延びたプロペラシャフトがフロア下を縦断して、リアアクスルに搭載されたデフ(デファレンシャルギヤ)に駆動を伝え、デフが入力を左右に分配してドライブシャフトを通して後輪を駆動する。
また別の方法として、トランスミッションをエンジンとは直結せずにデフと一体化してリアアクスル上に配置するトランスアクスルという手法もある。そこでFRにするとよいこととは、前輪は操舵を受け持ち後輪は駆動を行う、というように操舵と駆動を別々のタイヤで行うことができること。
というのも、タイヤのグリップ性能は縦方向(ブレーキ&駆動)と横方向(コーナリング)を合計したものがMAXとなるからだ。
例えばMAXのグリップ性能を10とすれば、縦方向に10使うと横方向は0になり、縦5なら横は5。FFは前輪が操舵も駆動も行うので、常に縦と横方向のグリップが足して10の相関関係にある。
FRの場合、リヤタイヤもコーナーリング中は縦+横のグリップを同時に使うが、前輪とは違ってタイヤそのものの操舵角がないのでより縦方向に使える。
そしてFRの前輪は縦(駆動)を行わないから、より横(操舵してのコーナーリング)のグリップが高くなる。しかも前輪の操舵初期の応答感がナチュラルで早い。つまりFRはハンドリングが自然なのである。
また、構造上エンジンを縦置きにするので、最も軽量化が困難な重いトランスミッションを車体の中心部付近にマウントすることになり、前後の荷重配分を50:50の理想値に近づけやすくよりナチュラルでスポーティーなハンドリングに、という利点も見逃せないのだ。
その反面、欠点はというとフロントセクション(エンジン)で作った駆動力を後輪に伝えるためのプロペラシャフトなどの補器類が必要なため、部品点数が増え駆動ロスも発生し燃費に影響する。
さらにトランスミッションが前席中央部にあるため、そのエリアのスペースが狭くなり、プロペラシャフト用のフロアトンネルも必要なためフロアが平坦ではなくなる。エンジンが縦置きなのでエンジンルームのスペースが長くなり、その分キャビンが狭くなる。
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