■運転に不慣れでもラク! ターボなしも走行性能は申し分なし
発売当時を振り返れば、20代後半から30代前半の女性がターゲット、街乗りベストなパフォーマンスに割り切ったことから、エンジンは660ccのNAのみ。ターボは用意されなかったのも、ムーヴ・キャンバスらしさと言っていい。
開発側からすればNAのみに絞ったため、走行性能をまとめ上げるのもシンプルで、ターボがあるより(タイヤサイズが異なるとさらに大変)、いい意味ではるかに楽だったはずである。
では、NAのみのエンジン、街乗りメイン、女性がターゲットだから、走りは二の次、三の次のクルマだったかと言えば、そんなことはない。
全高、重心はタントよりずっと低く、足回りは軽自動車の中でもピカイチ(当時)の最新のムーヴから移植したものなのだから、両側スライドドアを備えた軽自動車としては、安定感、安心感は文句なし。カーブを曲がるのは不安……といった女性ユーザーにうってつけの走行性能を備えていたというわけだ。
■ヴォクシー並の後席スペースを確保! ソファー級の座り心地も見事
実際、運転席に着座すれば、たっぷりとしたシートサイズ(特に座面長)、ソファ感覚のかけ心地。すっきりとした横基調のインパネデザインによるパノラミックな視界から、誰もがデザイン性だけでなく、居心地の良さ、運転のしやすさを実感できたはずである。
そして、スライドドアが子育て世代にうれしいのは当然として、スライドドアならではの抜群の乗降性の良さ(スライドドア開口部は高さ1110mm、幅590mm。ステップ高370mm)で乗り込むことになる後席は、身長172cmの運転ポジション背後で頭上に130mmはともかく、膝周りになんと最大350mm(後席240mmのスライド位置による。最小90mm)を確保。
ノア/ヴォクシーなどのMクラスボックス型ミニバン並みの広大なスペースがあり、家族やお友達を後席に招き入れれば、その広さに感動必至。明るく解放感溢れる前後席の居住性によって、まるでガラス張りのオシャレなカフェスペースの窓際ソファ席にいるまま移動しているかのような感覚にさえなれるのである。
■トータルコーデが秀逸! ダサさがないのもウケた要因
郊外のオシャレな住宅街に住むファミリーは、アウトドアやガーデニングの趣味を持っているケースも多いはずだが、ラゲッジスペースはムーヴとタントの中間的全高、ボックス型ボディを生かし、開口幅900~1060mm、開口高875mm、フロア奥行き330~580mm(後席スライド位置による)、幅885mm、天井高875mmと広大。
後席を格納すれば奥行きは1110mmに達し、アウトドアのためのグッズ、そしてガーデニング用に買った荷物を積み込むにも最適なスペースを備えているのである。
ラゲッジフロアのボードを外せば、観葉植物などが積める天井高が得られるのも使いやすさのひとつである。また、ラゲッジルームの開口部地上高がステーションワゴン並みの地上650mmに設定され、女性の手による荷物の出し入れ性の配慮も嬉しいところだろう。
細かいことを言えば、インテリアのマイルームのようなデザイン、カラーリング、女性の使い勝手を研究したであろう運転席周りの収納の豊富さなども、おそらくダイハツの女性開発陣が徹底的に考え抜いたポイントであるはずで、クルマの”機械感”皆無の室内空間と相まって、女性ユーザーの心をグイッと掴んだことは間違いない。
世の中にはエクステリアとインテリアのコンセプトが合致していない不思議な(!?)クルマも少なくないのだが、ムーヴ・キャンバスの場合、エクステリア、インテリアのコンセプト、センスが見事に合致しているのである。
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