全世界で売れる「セダン」がナゼか日本では凋落するナゾ。その理由は何か?

■セダンは低重心・高剛性が快適性と走行安定性を両立!!

 そこで改めて、セダンの価値を考えてみたい。

 セダンは大半の車種が全高を1500mm以下に抑え、SUVやミニバンに比べると重心が低い。

ボディ剛性の高さは走りの安定感にもつながる。トランクを独立させることで室内の遮音性も高い。いいことづくめのはずだが日本では絶滅の危機に。SUVのような華がないのがいけないのか??
ボディ剛性の高さは走りの安定感にもつながる。トランクを独立させることで室内の遮音性も高い。いいことづくめのはずだが日本では絶滅の危機に。SUVのような華がないのがいけないのか??

 また、ボディの後部に居住空間から独立したトランクスペース(荷室)を備えるため、後席の後ろ側にはボディ骨格や隔壁が設置される。そうなるとセダンは、SUVやミニバンに比べてボディ剛性を高めやすい。

 そして、低重心でボディ剛性が高ければ、走行安定性を向上させやすい。高速道路やカーブの多い峠道、あるいは走行中に危険を避ける時も、セダンであればSUVやミニバンよりも安心して運転できる。

 セダンボディは、乗り心地にも優れた効果をもたらす。剛性が高く低重心で、乗員の着座位置も低いからカーブを曲がったり、路面のウネリを通過したりする時もボディが左右に振られにくい。セダンではクルマ酔いが生じにくい人もいる。

 さらにセダンには居住空間から隔離されたトランクスペースがあり、そのなかに後輪が位置するから、タイヤが路上を転がる時に発するノイズも伝わりにくい。

■今も高級車としての要件を実現させやすいパッケージも実はセダンなのだ

 このようにセダンは走行安定性と乗り心地が優れたカテゴリーで、いい換えれば安心と快適性を向上させやすい。究極の快適性を追求するセンチュリーは、今でもセダンボディを採用する。セダンが伝統あるカテゴリーで、センチュリーのようなフォーマルなイメージを備える理由も、セダンボディの特徴とされる快適性に基づく。

 また、セダンは低重心かつ高剛性のボディによって走行安定性を向上させやすいから、WRXのような高性能なスポーツモデルを開発する時も有利だ。高性能車は、2ドア/3ドアボディのスポーツクーペやHBとも親和性が高いが、後席を装着しない車種もあって実用性は低い。

 その点でセダンは、高性能を発揮させやすく、なおかつ後席の居住性や乗降性もいい。ファミリーカーとして使える実用性も確保できる。

 このほか、中高年齢層のドライバーにとってSUVやミニバンは着座位置が高めに感じるが、セダンであれば視線の位置もなじみやすいから運転しやすい。立体駐車場の利用性が優れていることもセダンの特徴だ。

■日本車では淘汰されるが海外勢は依然としてセダンが数多くラインナップされる

SUV全盛と言われるなかでも写真のベンツなどはセダンのラインナップを堅持。やはり、ファッション感覚のSUVでは得られない快適性や走行性をセダンに求める文化があるのだろう
SUV全盛と言われるなかでも写真のベンツなどはセダンのラインナップを堅持。やはり、ファッション感覚のSUVでは得られない快適性や走行性をセダンに求める文化があるのだろう

 セダンは走行安定性と乗り心地が優れているから、日常的に高速走行の機会が多い地域に適する。特にメルセデスベンツ、BMW、アウディなど欧州のプレミアムブランドでは、走りの質、安心と快適が重視され、今でもセダンのラインナップが豊富だ。

 それなのに国内で売られる日本車では、レクサスブランドを除くとセダンが激減した。その結果、日本のセダン市場が、輸入車に浸食されている。クラウンは今後、前輪駆動になって多彩な発展をするというが、セダンボディは廃止できない。クラウンの価値は、日本のユーザーが共感できる日本車ならではの安心と快適にあり、その実現にはセダンボディが不可欠であるからだ。

 本来ならクラウンは、前後輪の重量配分が優れ、操舵感覚がアクセル操作の影響をほとんど受けない従来と同じ後輪駆動が好ましいが、セダンであれば前輪駆動に変わってもクラウンの持ち味は継承できるだろう。

 従ってセダンの人気が下がっても、その魅力は色褪せない。特に今は衝突被害軽減ブレーキを始めとする安全装備への関心が高く、快適性を向上させる運転支援機能も人気の装備となった。もともと安心と快適性が優れたセダンは今のニーズに適しているから、改めてその価値を市場に訴求すべきだ。

 加えてトランクスペースを備えたセダンは、空力特性も優れ、燃料消費量を抑えやすい。エコロジーの期待にも応えられるから、セダンを衰退させるのは惜しい。

次ページは : ■実はミニバンも復活!? ミニバンに流麗なボディをかぶせたのがセダンだった

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