新型クラウンだけじゃなかった!! 歴代クラウン超大胆変貌の歴史と革新性

■他社高級乗用車との競合

バブル時代の「シーマ現象」真っ最中に登場した8代目クラウン
バブル時代の「シーマ現象」真っ最中に登場した8代目クラウン

 7代目をさらにブラッシュアップさせたかのような高質感を持った8代目は1987年9月にデビューしている。

 世の中はまさにバブル経済絶好調期、実車を見ずに企業経営者などから「最上級グレードにフルオプションで持ってこい」と受注がバンバン入っていたのだが、それに輪をかけるように、同時期に登場したV8エンジンを搭載した、3ナンバー専用ボディを採用する日産シーマが、バブル経済の波にも乗って“シーマ現象”と世間でいわれるほど大ヒットする。

 デビュー当初は3L直6までしかなかった8代目は1989年に初代セルシオにも搭載した、4LV8エンジン搭載車を追加したのだが、シーマ現象を抑えることはできなかった。トヨタとしてはシーマ現象の仇は初代セルシオで“倍返し”することとなった。

 9代目からハードトップ系は3ナンバー専用ワイドボディとなり、さらに上級シリーズとなる“クラウンマジェスタ”が用意され、1991年10月に登場している。セダンは8代目を大幅改良してしばらく継続生産していた。そして1995年12月にモデルチェンジを行い、セダンとハードトップは別々に設定されるようになった。

 9代目4ドアハードトップは“くじらクラウンの再来”と呼ばれるほど、そのエクステリアには賛否がわかれた。全体に丸みを帯びたスタイリング、とくにリアまわりを“クラウンらしくない”とする声が目立っていたのである。1993年に行われたマイナーチェンジでは、“マイナーチェンジの範囲を超えている”といわれるほど、リアまわりの大規模改良を行っている。

 ちなみにマジェスタでは新開発モノコックボデーなのに対し、クラウンの4ドアハードトップではペリメーターフレーム採用となっていた

 クラウンセダンが1995年に3ナンバー専用へフルモデルチェンジしたタイミングで、タクシー専用車として、“クラウン コンフォート及びコンフォート”が同時デビューしている。いまでは有名無実化している地域も多いが、小型タクシー車両としてコンフォート、中型タクシー車両としてクラウン コンフォートとなっていた。

 6代目トヨタ マークIIセダン(X80系)をベースとし、リアピラーを立たせて乗降性を高めるなどタクシー専用設計が余すところなく行われた。当時初めてクラウン コンフォートのタクシーに乗った印象は「これはクラウンじゃない」というものであった。

 シートバックはクラウンセダンベースでは居間のソファのように寝ているが、コンフォートシリーズは立ち気味なのが目立った。また車内の静粛性もクラウンセダンベースの車両は圧倒的に静かなのに対し、クラウンコンフォートでは、一般車両並みのレベルであった。

 すっかりコンフォートシリーズにタクシーが入れ替わったころに、“最後の生き残り”のようなクラウンセダンベースのタクシーに乗ったが、コンフォートとは明らかに異なる車内空間に改めて驚くとともに、“ずいぶん贅沢していたんだなあ(クラウンセダンベースのタクシー車)”と考えてしまった。

 クラウンという車名が残っているものの、車両開発ではタクシー車両を意識する必要がクラウンにはなくなったことになる。

 ハードトップシリーズでの11代目は1999年9月にデビューしているが、11代目ではドアサッシを持つセダンスタイルとなった。それまでのセダンはマイナーチェンジして継続ラインナップされたので、2タイプのセダンをクラウンは持つこととなった。

 2003年12月に登場した12代目は11代目に引き続きセダンボディを採用した。“ゼロからのスタート”をテーマに主要パワートレーンを一新したことから“ゼロクラウン”と呼ばれている。

 それまでは、一昔以上前のアメリカ車のように、かなりソフトな足回りで“舟をこぐような”と呼ばれるほど柔らかい乗り心地だったクラウンが、ドイツ車張りに硬い足回りを採用するなどしてユーザー層の若返りを行おうとした意欲作であった。

 ただし、そのころはまだ初代までとはいかなくとも、2代目や3代目からクラウンを乗り継いできたようなオーナーもまだ多く、“足が硬すぎる”といった話も多くあったと聞いており、2008年2月にデビューした13代目では少々“先祖返り”したような乗り心地になっていた。

 昔からの流れを汲むセダンシリーズは2001年8月にコンフォートシリーズをベースとしたモデルが登場し、2017年にJPNタクシーが登場するタイミングでラインナップから消えている。

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