「戦争と建設機械」コマツから世界が得た回答
世界の紛争地で活躍する日本製品に、トヨタと並んで建設機械の小松製作所(コマツ)がある。トヨタもコマツも、自衛隊の装甲車両の主要メーカーではないが、紛争地とそれに関係する諸外国では両メーカー製品は圧倒的な人気を誇っている。
コマツはかつて96式装輪装甲車やLAV(軽装甲機動車)など自衛隊の特殊車両の開発・製造を手がけてきたが、現在は生産の継続と保守のみである。ところが、これまで述べてきたように世界中ではトヨタ自動車の足回りは装甲車に用いられ、建設機械ではコマツが大人気である。これはなぜか。
戦争になれば大量の土木工事とそれに伴う建設機械が必要になる。塹壕を掘るのはもちろんのこと、防護力強化のために戦車ですら車体を地面に掘った穴の中に入れる。
ロシアによる侵攻が開始されてからは戦術核兵器(中性子爆弾)の使用が危惧され、戦場において地面を掘ることがますます重要になった。これまでの原子爆弾、水素爆弾であれば戦車や装甲車はそれなりに防護力を発揮するが、中性子線をそれらの装甲では防護できない。
中性子線の遮蔽には水分を含んだ大量の土が必要となるため、地面に穴を掘って埋めて防護するのだ。
コマツの世界的な大成功は、政情不安定の国にも土木工事用の建設機械をリースできるようにしたことにある。海外ユーザーからのリース料金が支払われない時は、リモートコントロールによって建設機械を動かなくしてしまう。この方法により、発展途上国や紛争地帯での土木工事用のハイテク建設機械導入ハードルが大いに引き下げられた。
軍用の土木・建設機械といっても、民間のものに装甲板を取り付けたり遠隔操作できるようにする程度の改造を施したものだ。まずは土木・建設機械を持たないことには土俵にすら立てない。世界にとってコマツはそのことを実感させてくれたのだ。
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【続編】世界の紛争地で日本製品が大活躍!! 激動の国際情勢で日本が出来ること、必要なもの
筆者:照井資規
1995年HTB(北海道テレビ放送)にて報道番組制作に携わり、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、函館ハイジャック事件を現場取材の視点から見続ける。
同年陸上自衛隊に入隊、陸曹まで普通科隊員として対戦車戦闘に精通、師団指揮システム陸曹となり自衛隊内のネットワーク整備に関わる。幹部任官時に衛生科に職種変更。岩手駐屯地勤務時に衛生小隊長として発災直後から災害派遣に従事、救助活動、医療支援の指揮を執る。陸上自衛隊富士学校普通科部と衛生学校の両方で研究員を務めた唯一の幹部であるため、現代戦闘と戦傷病医療に精通する。2015年退官後、一般社団法人アジア事態対処医療協議会(TACMEDA:タックメダ)を立ちあげ、医療従事者にはテロ対策・有事医療・集団災害医学について教育、自衛官や警察官には世界最新の戦闘外傷救護・技術を伝えている。一般人向けには心肺停止から致命的大出血までを含めた総合的救命教育を提供し、高齢者の救命教育にも力を入れている。教育活動は国内のみならず世界中に及ぶ。
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