クルマを運転するにあたって、経済性や安全性が重視されるようになって、楽しむための装備やグレード設定が少なくなっている。その最たるものがマニュアルミッション車だろう。
運転できる人が限られることもあり、普通車のMT車の購入はためらわれるが、維持費の安い軽自動車ならばどうだろう?
ここのところ軽MTも選択肢の幅が減ってきているが、それでも趣味性の高い車種が残っている。そんな楽しい軽MTをご紹介しよう。
文/斎藤聡、写真/ベストカー編集部
■昭和の終わり頃から徐々に減少……いまや軽MTは絶滅危惧種
気が付けば軽自動車MTが激減しています。絶滅の危機と言っても過言ではありません。いまMT車が残っているのはホンダのN-ONEとスズキのジムニー&ワゴンR、それにダイハツのコペンです。
さすがに商用車にはMTが残されていて、N-VAN(ホンダ)、エブリイとスーパーキャリー(スズキ)、ハイゼットカーゴとハイゼット・トラック(ダイハツ)が加わります。
でも、ここに簡単に書き切れてしまうくらいですからやはり少数と言わざるを得ません。
これまでMT車が残されている理由は、高齢者でMTしか乗れないというユーザーがいるとか、根強いMT車ファンがいるから、といったことが言われてきましたが、それはとても脆弱な理由であるように思えてなりません。
かつてMTが隆盛を誇っていた昭和の頃は、性能的にMT車のほうが優れていて、ストレスなく走るためにはMTが必須だったのです。といっても、すでに昭和の終わり頃……1980年代後半には、徐々にAT比率が高くなっていました。
まさか今のような状況になるとは想像できませんでした(もしかしたら、という一抹の不安はありましたが……)。
一方、軽自動車はというと、1976年からそれまで360ccだった排気量が550ccに拡大されます。550ccの時代は案外長く1998年まで続きます。
そして現行の660ccに拡大されます。排気量拡大の理由はいくつかあるのですが、クルマに安全性が求められるようになったのに合わせて軽自動車のボディサイズが拡大されます。それに伴う重量増に合わせて排気量が拡大され660ccになったのです。
排気量に余裕が出てくると、ATとのマッチングが良くなります。ほんの110ccの違いですが、排気量が660ccになったことでエンジン自体のトルクが大きくなり、ATとのマッチングは数段よくなりました。
普段の足にイージーに使いたい軽自動車ですから、不満なく走るのならATのほうが楽なのは言うまでもありません。そんなわけで急速にユーザーの軽自動車AT比率が高くなっていきます。
この傾向にさらに拍車をかけることになるのが無段変速のCVTの登場です。金属ベルト+プーリーを組み合わせた現在のCVTは1970年代に登場しました。
当初はアクセル操作とエンジンの上昇がバラバラで不評でしたが、電子制御の進化によって、エンジンの吹き上がりと加速をリンクさせたり、仮想のギヤ≒ステップギヤを採用することでマニュアルミッション風味のドライブフィールも作り出すことができるようになりました。
そんなわけで、残念ながらいまやコストが高く運転操作の煩雑(?)なMTはどんどん回っているのが現状なのです。
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