1991年にAT限定免許が創設された頃は、「男は黙ってMT免許」という空気だった。しかし最近では、AT限定免許とMT可免許の割合はおよそ6:4、新車販売では99%がAT車と言われている。MT車に乗る人はよっぽどのマニアか、どうしてもAT車になじめない、もしくはMTに乗らざるを得ない一部のドライバーだ。
このような現状であるにもかかわらず、トヨタやマツダなど、一部の自動車メーカーは、MT車のラインアップに力を入れている。AT車では補い切れない魅力がMT車にはあり、たとえ人気がなくてもMT車をラインナップすることには意味がある、ということなのだろう。
自動車メーカーが売れなくてもつくり続ける「MT車」の魅力について、ここで改めて振り返ってみようと思う。
文:エムスリープロダクション、立花義人
アイキャッチ写真:AdobeStock_ Tomasz Zajda
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUZUKI、SUBARU、AdobeStock
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技術の進化によって、どんどん存在価値がなくなっているMT
AT車は1940年代から50年代にかけてアメリカのメーカーを中心に開発され、急速に普及した。当時のAT車はMT車に比べると伝達効率が悪く、燃費も良くなかったが、ガソリンの安いアメリカでは燃費の悪さは気にされることはなく、大排気量車をATでゆったり乗る、いわゆる「イージードライブ」なスタイルが受け入れられ、普及した。
しかしながら、原油をほとんど輸入に頼る日本ではそうはいかず、AT車の普及には時間がかかった。それでも1980年代後半から一気に普及が進み、バブル景気による「ハイソカーブーム」も影響し、それまで一部の上級モデルにのみ設定されていたATが、一種のステータスアイテムというポジションを得る。
その後、技術の向上によって、コンパクトカーや軽自動車にもCVTを中心にATが搭載され、普及がさらに加速。燃費の面で有利とされてきたMT車のアドバンテージが薄れたことや、渋滞やストップ&ゴーの多い日本では、AT車の方がストレス感じずに運転できる点が、AT車が普及した背景にあるようだ。
さらに近年では、先進安全運転支援システムの普及も、MT車の存在を脅かしている。たとえばアダプティブ・クルーズ・コントロールは全車速対応の渋滞追従機能が当たり前になってきているが、MT車だと、構造上全車速対応は難しい。
またMT車=スポーツカーという従来の常識も、メカニズムの進歩によって覆されている。最近のスーパーカーにはデュアルクラッチ式の2ペダルMTや多段ATが当然のように搭載されている。その方が、シフトチェンジが早いうえ、ミスも少なく、総合的にクルマの性能を発揮しやすいからだ。
ひと昔前のレーシングカー並みの性能を持つようになった現代のスーパーカーにとって、もはやトラディショナルなMTでは力不足なのだ。
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