救急車の病院到着時間がここ20年間で1.5倍に伸びています。この要因のひとつに「救急車が近づいても避けないクルマ」があるとのこと。なぜ避けないかといえば、「自動車の遮音性能の向上」、「ドライバーの高齢化」、「そもそも急搬送件数の大幅な増加」など複合的な要因がありますが、これを自動車とITの進化で少しでも改善する動きが広まっています。ぜひ応援したい。
文/ベストカーWeb編集部、画像/AdobeStock(アイキャッチ画像は@Satoshi)、ITS Connect推進協議会
■救急車の搬送時間が26分から40.6分に
救急車の病院到着時間が年々遅くなっている。総務省の調査によると、救急車が現場に駆け付けて病院へ搬送するまでの「急搬送時間」は、平成10年(西暦1998年)に全国平均26分だったものが、平成30年(2018年)には39.3分まで伸びているとのこと(総務省:「令和元年版 救急・救助の現況」)。ちなみにこの数字は現在さらに伸びており、令和3年(2021年)は全国平均40.6分になっている。
救急搬送時間が伸びている要因はさまざまで、そのひとつに搬送人員の増加(1998年は354万5975人だったが2021年は549万1469人)が挙げられる。これは携帯電話の普及で救急車を要請する手段のハードルが低くなったことも関係していると見られ、総務省は救急車の増加や「救急安心センター事業」の啓発(救急車を呼ぶかどうか迷った時に相談する窓口。電話で「#7119」をプッシュすると電話口で医師や看護師等の専門家が救急相談に応じてくれる)などで対応している。
そのいっぽうで、「救急搬送時間の増加」には「サイレンを鳴らす救急車が近づいても、どいてくれないクルマや、気づかず交差点に進入してくる車両」の存在もまた、重大な社会課題になっている。
あらためて書くまでもなく、サイレンを鳴らす救急車を代表とした「緊急走行中の緊急車両の走行を妨げる行為」は違法。道路交通法では「緊急車等妨害違反」と「本線車道緊急車妨害違反」という2つがある。
「緊急車等妨害違反」は、緊急走行中の緊急車両が自車に近づいているのにも関わらずそのまま走行を続ける違反行為で、反則金は、普通車の場合6000円、交通違反点数は1点。「本線車道緊急車妨害違反」は、緊急走行中の緊急車両が一般道や高速道路などで本線車道に車線変更するときや、本線車道に合流する進行を妨害する違反行為で、こちらも同じく反則金は普通車で6000円、交通違反点数は1点。
何より、「救急車の走行を妨害する」などというのは法律違反どうこうの前に、モラルとして最低の行為といえる。さっさとどけよ、命がかかわっているんだぞ、と。
救急車については「誰だって気づけば避ける」と信じて話を進めるが、これには冒頭に書いたとおり、近年のクルマの遮音性の向上、ドライバーの高齢化、(カーエアコンの普及による)ウインドゥを開けて走行する車両の減少、都市騒音の増加などの要因によって、「相対的にサイレン(法定音量基準は70年前から変わっていない)が聞こえづらくなっている」という複合的に困難な状況がある。
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