水泳も県大会レベルだった!? 優勝しなくても怒られない? トップレーサーの少年時代はまさに夏色だ

■夏休みは「カートにいっぱい乗れる!」ってことがすごく嬉しかった

5歳からカートに乗っている少年は、今ではスーパーGTとスーパーフォーミュラを戦うレーシングドライバーとなった
5歳からカートに乗っている少年は、今ではスーパーGTとスーパーフォーミュラを戦うレーシングドライバーとなった

 僕も5歳でカートを始めてから、小学校に上がっても土日はとにかく練習だったりレースで遠征したりでしたが、夏休みはカートにいっぱい乗れる! ってことがすごく嬉しかったですね。

 授業中、先生の話を聞いてはいるんですけど、頭の隅ではずっとレースのことを考えてました。前の週の土日に走ってこういう課題があったなとか、こういうふうにドライビングしたいなとか。そういうことをずっと頭のノートに書いていて、気づいたらそれを実際のノートに書いてたり。

 それを先生に注意されたことはないんですが、『授業中に意識が別のところに行っちゃってるときがあるようです』と言われたことはあります。

 とにかくカートが好きで、レースももちろん好きで、カートって乗り物が自分にとっては走れば走るほどどんどん面白くなって、乗れば乗るほど速くなっていく。

 上達していく過程が自分の中で実感できて、そういうところがやっぱり楽しかったし、幼い頃から勝つか負けるかという部分のシビアさを味わえて、すごく勉強になりました。

 レースには父がメカニックとして二人三脚で帯同してくれました。母も一緒で受付とか手伝ってくれたり。夏休みに限らず土日はいつも家族3人でハイエースにカートや機材を積んで移動して、本当に家族がワンチームでレースに挑むという感じでした。

 家庭の事情を考えれば、僕のカート活動はけっこう大変だったと思います。当時から支えてくれる人がいなければまったく出来なかった競技で。

 応援してくれる人もいてくれて、けどもちろん成績も残さないといけない。とにかく勝つためにはどうするか、ということを幼い頃から徹底してやっていて、「あのセットアップのここが良くなかったのかな」とか「あの駆け引きはヘタだったなぁ」とか、カートやレースにまつわる話が日常会話でしたね。

 でも、すごく印象に残ってるんですが、僕、レースの成績で父から怒られたことが一切ないんです。これは父の考えなのかもしれませんが、もちろん準備は抜かりなくやるべきだけど、レースは水物だから結果がどうなるかはわからない。

 結果そのものよりも、そこにいくまでの課程を客観的に振り返って、ここは良かったけどあれは良くなかった、優勝してもスタートから3周は良かったけど最後の5周は良くなかったね、というふうに良い悪いをハッキリは言う。

 それに、カートの準備と片付けについてはめちゃくちゃ徹底されたというか、ちゃんとやりなさい! と教わりましたけど、成績の順番に関しては本当に何も言われたことがないんです。

 そんな感じで、基本的に笹原家は『昨日のあのテレビ面白かったよねー』って話よりも、カートやレースにまつわる話をすることがすごく多かったです。ちょうど出始めたレースのDVDや動画配信を見たりして、家族の時間というか交流は毎日ありました。

 それが一番少なかったのが、僕がヨーロッパに行っていた時です。(次回に続く)

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