日産サクラと三菱eKクロスEVの魅力と補助金の壁 軽自動車×EVの方程式は成功か!?

日産サクラと三菱eKクロスEVの魅力と補助金の壁 軽自動車×EVの方程式は成功か!?

 2022年5月に日産サクラと三菱eKクロスEVが発表されてから、早3カ月が経過した。軽自動車とEV(電気自動車)の調和が良く、両車とも販売が好調である。EV入門車としても需要があり、さらに従来型からの乗り替え、セカンドカーとしての購入するオーナーも多いという。

 そこで、本稿では日産サクラと三菱eKクロスEVの売れ行きを読み解きつつ、なぜここまで売れているのか、について解説。今後、両車を出発地点とし、「軽EV」というジャンルが成功するのか、そしてEVの補助金はどうなるのか、について考察していく。

 さらに同軽自動車である日産デイズ、三菱eKワゴンなどの販売状況に変化があったのかなど、販売店の反応についてもレポートする。

文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、MITSUBISHI、佐藤正勝、平野 学

【画像ギャラリー】セカンドカーとして人気のサクラ&eKクロスEV ベース車との内外装の違いは?(28枚)画像ギャラリー

日産サクラ&三菱eKクロスEVの販売好調!!

政府補助金込みで約178万円からという手の届きやすい価格で、売れ行き好調な日産サクラ。7月19日時点で、受注台数が2万2000台を超えた
政府補助金込みで約178万円からという手の届きやすい価格で、売れ行き好調な日産サクラ。7月19日時点で、受注台数が2万2000台を超えた

 2022年5月20日に発売された日産サクラと三菱eKクロスEVの売れ行きが好調だ。両車とも基本部分を共通化した軽自動車サイズのEV(電気自動車)で、サクラは7月19日の時点において、受注台数の累計が2万2000台に達した。

 姉妹車になるeKクロスEVの受注台数は、7月中旬時点で約4900台だ。1カ月の目標とされる850台の6倍近い。日産の販売店は全国に約2100箇所だが、三菱は約540箇所と少ない。1店舗当たりの受注台数は、サクラが2.3台、eKクロスEVも1.6台だから、後者も相応に売れている。

 ちなみに2021年に国内で新車として登録されたEVの総数は、2万1139台(小型/普通車)であった。このうち、日産リーフが約半数の1万843台を占めたが、サクラは前述のとおり1車種だけで2万2000台を受注した。2021年におけるEVの販売総数を上まわる。

 またサクラとプラットフォームを共通化したデイズの届け出台数は、2021年が5万3773台だから、サクラの受注台数はその40%だ。サクラは初代モデルだから、従来型からの乗り替え需要もなく、EVの売れ行きとしては圧倒的に多い。

軽自動車×EVの方程式は成功か!? セカンドカーとしての利用も!

 サクラが売れ行きを伸ばした背景には、複数の理由があるが、その筆頭は軽自動車の規格とEVの親和性が高いことだ。

 EVには1回の充電で走行できる距離が短い欠点がある。走行可能な距離を伸ばすには、駆動用電池の容量を大きくする必要があり、その分だけボディが重くなって価格も高まる。そしてボディが重くなると、走行性能が悪化するから、さらに高出力のモーターを搭載せねばならない。そうなると電力消費量も増えて、走行できる距離が短くなり、駆動用電池を一層拡大する必要が生じてしまう。

 この悪循環を断ち切る有効な手段が、EVを軽自動車サイズで開発することだ。軽自動車なら「1回の充電で走行できる距離が短い」という欠点が問題になりにくい。もともと軽自動車は、街中の移動に使われるからだ。午前中に買い物に出かけて戻ったら充電、午後は家族を駅まで迎えに出かけて再び充電、という使い方なら、1回の外出で長い距離を走ることはない。必要に応じて充電も頻繁に行える。

 特に自宅に小型/普通車のSUVやミニバンがあり、セカンドカーとしてEVを併用するユーザーは、走行距離の心配がほぼ完全に払拭される。長距離を移動するときには、ファーストカーのSUVやミニバンを使うからだ。

 ただしEVでも3ナンバー車のリーフなどでは、セカンドカーのニーズに対応しにくい。セカンドカーは、狭い裏道を走ったり混雑した駐車場を利用するが、リーフではボディが大きいからだ。リーフのサイズになると、ファーストカーとして使われるから、1回の充電で長い距離を走行できる機能が求められてしまう。

 またEVは価格の高さも指摘されるが、軽自動車なら比較的安い。サクラで中級に位置するXの価格は239万9100円で、経済産業省による55万円の補助金を差し引くと、実質価格は184万9100円だ。ターボエンジンを搭載して装備を充実させたデイズの最上級グレードと同等になる。

 その点でリーフの価格は、装備のシンプルなXでも370万9200円で、経済産業省による補助金の78万6000円を差し引いても、実質価格は292万3200円だ。サクラXを選ぶと100万円以上安く収まる。

 以上のようにEVを軽自動車サイズで開発すると、1回の充電で走行できる距離が短い、価格が高いといった欠点が問題視されなくなる。サクラとeKクロスEVが1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで180kmに留まるが、軽自動車ならそれで充分だ。

 サクラに以上のようなメリットがあることは日産も把握しているから、販売促進にも力を入れる。それを示すのが残価設定ローンの残価だ。残価設定ローンでは、契約時に数年後の残価を設定して、残価を除いた価値の減る金額を分割返済する。そうなると残価が高ければ、月々の返済額は安くなる。

 リーフの場合、5年後の残価は新車価格の28%だが、サクラは35%と少し高い。EVとしては、残価を高めて月々の返済額を下げられるように配慮した。この背景には、販売促進のほかに、サクラが中古車として相応の金額で販売できるという予想もある。

 残価を高く設定しても、数年後の中古車価格が下がると、日産フィナンシャルサービスが損失を被る。月々の返済額を過剰に安くすることはできないわけだ。

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