セルシオが日本の高級車に与えた影響とは何か?
セルシオにはA・B・C、3つのグレードが存在した。A・B仕様はオーナードライバー向けであり、足回りにはコイルサスペンションを用いる。B仕様にだけピエゾTEMSという世界初の電子制御サスペンションが装備された。最上級のCはショーファーカーとしての立ち位置を取ったエアサス仕様だ。
クラウンはオーナードライバーの存在を中心に考えたクルマ作りをしている。その上級仕様であるセルシオでも、A・Bグレードのオーナードライバー向けが量販モデルとなると予想していたが、人気の中心は最上級のCとなった。
セルシオのほとんどがショーファーカーとして使用されていたわけではない。多くはオーナードライバーへ向けて販売されている。それでもショーファードリブンではない使用方法で、オーナーたちは最高であり最上級であるセルシオを求めたのだ。
これを機に、日本の高級車づくりは変わったと思う。運転していて楽しい、後席に乗って快適、という一見すると相反するような要素を、同時に成立させるクルマ作りを目指すようになった。
レクサスでは、こうした相反する価値を同時に叶えることを二律双生(にりつそうせい)というが、こうした全部取りをし、それぞれを高次元で実現する手法が、セルシオによって、日本市場へ広げられたのではないだろうか。
新型クラウンに継承されたセルシオの価値観
セルシオの登場で、トヨタの最高級は紛れもなくセルシオになった。セルシオは、自由な思想、自由な発想の中で、最高を作り出したクルマだ。
しかし、同時にクラウンもまた、トヨタの最高なのである。クラウンは「日本」という括り、ルールの中で実現できる最上級を体現したクルマだ。クルマの大きさや市場といったルールに縛られながらも、最上級であり続けること、これがクラウンの意味であり、存在を支えるものだったと思う。
2022年、新たに登場したクラウンには、これまでの「日本」というルールは存在しない。グローバル市場へ向けて自由な表現ができるようになったのだ。こうした背景を考えると、新型クラウンの後ろには、セルシオの姿がうっすらと感じられる。
セルシオによって脅かされたクラウンの存在。しかし今では、セルシオが作り上げたトヨタの新しい高級車という道を引き継ぎ、世界へ向けてクラウンが歩き出した。わずか16年で世界のトップに肩を並べたセルシオ。その存在を感じながら、新型クラウンは世界へ羽ばたく。
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