高性能EV(SUV)とWeb販売を引っ提げて日本市場に復帰したヒョンデ。世界販売は好調なものの日本市場には食い込めていない同社が、どのような態勢で日本のユーザーへブランドの優位性を広めてゆくのか注目が集まるなか、ひとつポイントとして挙げられるのが「高性能スポーツモデル」だ。ファンにはお馴染みではあるが、ヒョンデといえば今や世界ラリー選手権(WRC)を支える主要マニュファクチャラーのひとつ。これをフックにして、ヒョンデは日本でブランド価値を築けるのか。
文、写真/石川真禧照
【画像ギャラリー】ヒョンデのレーシングカーもカッコいいぞ!! 高性能ブランド「N」のマシンたち(13枚)画像ギャラリー■WRCでチャンピオン獲得経験のあるヒョンデ
今年(2022年)11月に開催される「ラリージャパン2022」に、トヨタと並んでヒョンデもワークスチームを送りこんでくる。世界ラリー選手権(WRC)では、ヒョンデはトヨタ、フォードと共にワークスチームを送りこむ数少ないメーカーだ。
今シーズンはトヨタの後塵を拝しているが、2017年に「PROクーペWRC」を投入してからは、2019年にFIA選手権、2020年には「i20クーペWRC」でマニュファクチャラーズ選手権チャンピオンを獲得する実力を発揮している。
今回、韓国の釜山モーターショーやヒョンデのR&Dセンターなどを取材したが、ヒョンデのモータースポーツに対する意気込みの凄さが明らかになった。その実力と実績はトヨタを脅かしかねないものだった。
■ヒョンデのモータースポーツ活動の歴史
2022年7月中旬、プサンモーターショーのプレスデイの日、ショーが終わったあとに、ヒョンデは、「N Day2022」というプレス向けイベントを釜山市内で開催した。そこにはヨーロッパやアメリカ、オーストラリアからのプレス関係も招待されていた。
会場はいくつかの部屋に分かれており、それぞれ展示車両が置かれていた。
入ってすぐの部屋はヒョンデのモータースポーツマシンのアーカイブ。
ヒョンデのモータースポーツ参戦は、日本ではあまり知られていないが、欧州では注目されている。
WRCに最初に参戦したのは2000年。「アクセートWRC」というマシンで出場した。このときは3年で参戦を中断している。
韓国はいまでも、乗用車メーカーが生産するのはセダンなど実用車ばかり。クーペやカブリオレといった「遊びクルマ」や、スポーツカーは生産していない。その理由は、「市場がまだそこまで成熟していないから」(ヒョンデ広報)。
にもかかわらず、ヒョンデは2000年にWRCに参戦。その後、2014年に再参入すると、今日まで連続して、ワークス体制を維持している。とくに2017年以降は、上位チームに名を連ねるほどに強くなっている。
一方で、市販車では相変わらずスポーツカーなどは生産していない。それでも細々と市販セダンベースのチューニングモデルをラインナップしている。それは「N」という名称が付けられていた。
そして2021年にEV(電気自動車)を市販することになったとき、ヒョンデの親会社の社長が、決断を下した。
「EVでのモータースポーツに力を入れよう」
実際にR&Dチームは、すでに燃料電池のレーシングカー「ヒョンデi35 N TCR」を7年前から開発。さらに0→100km/h加速4秒以下、航続距離600kmというFCVの「N vision74」も実験に成功している。
「高出力を出すにはバッテリーも重くなる。バッテリーの次期機能の開発こそN vision74の目的でした」
と語ってくれたのは、先行技術開発チームチーフ、ユン・ヨンソン氏。
こうした研究の成果の一部としてEVのスポーティ化が実現した。
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