■じっさいの「ケンメリ」は
先の三代目に較べ、チェンジされた四代目スカイライン、C110系はひと回り大きく、重く、豪華になっていた。クルマ好きのスカイラインだったものが、メジャーになって小型車の代表のような存在になったのだ。
個性的であるよりも、より多くのユーザー層を想定せねばならなくなった結果、というものかもしれない。それは先の広告戦略からも読んで取れる。
具体的には、直列6気筒2.0Lエンジンを搭載したスカイラインGTには、豪華仕様のGT-Xもラインアップ。それとは別に1.8L、1.6Lの4気筒エンジン搭載車を揃える。
6気筒エンジンの4ドアで4460×1625×1395mmと、先代に較べ全長、全幅とも30mmほどサイズアップされたのに、逆にホイールベースが30mm短くなっているのが面白い。
4気筒モデルは6気筒モデルよりホイールベース、全長ともそれぞれ95mm、210mm短くされている。ハードトップはまたちがう寸法で、細かくシャシーをつくり分けていた。
デビュウ当初こそGTの120PSをはじめ、前モデル並みのパワーを備えていたが、やがて規制が加えられるとともに115PSへとドロップ。数値は僅か5PSダウンだが、体感的には暗い時代を思わせた。
1975年にはマイナーチェンジされ、それまでプリンス系の4気筒G16型、G18型エンジンが日産系のL16型、L18型に換装。一方GTにはインジェクション装着130PSエンジン搭載のGTX-Eが導入されたりした。
■待望のGT-Rが登場するも……
C110系スカイラインは、4ドアと2ドア・ハードトップ、2種のボディ・スタイルがあったが、全体にパネル面積が大きくボテッとした印象を与えた。しかし、その印象を一変するモデルがデビュウより半年ほど遅れてやってくる。いうまでもない、クルマ好きが待望した「GT-R」の登場である。
「残っていたS20型エンジンの数だけつくられた」といわれた通り、わずか200台足らずの生産。レースに出ることもなく、生まれながらのコレクターズアイテムというような存在であった。
前後のホイールアーチにブラックのオーヴァフェンダが付けられ、シンプルなメッシュを中心としたグリル、それに控え目なリアスポイラーが付けられたスタイリングは、「ケンメリ」のデコラティヴな印象を消して迫力あるものに変えていた。
エンジンその他は先代GT-Rから引継ぐ部分が多かったが、四輪ディスクブレーキの採用は特筆されるものであった。
あっという間にオーナーの元に渡ってしまい、こののち、1980年代末の「32GT-R」まで、しばらくGT-Rは空白の時間を過ごすことになる。「ケンメリ」を印象づけたGT-Rとして忘れられない。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
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