2022年3月、日産ディーラーが公式ブログで「2022年8月をもって日産マーチの生産終了」と明らかにした。ただし、自動車メーカーである日産自動車が配信したわけではないが、その可能性は高いと言われていた。
そんななか、マーチを生産する日産タイ工場にて、2022年7月26日、マーチのラインオフ(生産終了)が行われた、というニュースが入ってきた。
この事実を日産広報部に確認すると、7月26日に生産終了となったのはタイ国内向けとのこと。気になるのは日本向けマーチの生産終了時期だが、その点についても聞いてみると、なんと、すでに日本向けマーチのタイ工場での生産を終了しており、この8月をもって生産終了する、とのことだ。
思えば、現行である4代目K13型マーチは、2010年7月に登場。先代K12型マーチの大成功を元に価格を限界まで安くしてより多くのお客様の手に届くように、と開発されたモデルだ。タイで生産して日本へ輸入する方式をいち早く導入したモデルでもある。
新車登録台数で見ると、初代K10型は約60万台、2代目K11型は約100万台、3代目K12型は約60万台、4代目K13型は、現時点約25万台以上。バブル崩壊を経た平成初期の2代目K11型マーチの時代がマーチの全盛期だった。
サニー、ブルーバード、セドリック、プリメーラ、キューブ、ティアナ、そしてフーガ、シーマも8月末で生産終了。名門と呼ばれた日産のブランドが、次々に消滅しているいま、マーチまでもなくなってしまうのは、非常に寂しい。
そこで、昭和の時代から令和まで40年続く名門「マーチ」が、日本に遺したものはなにか、探っていきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/日産自動車、ベストカーweb編集部
■マーチの需要はノートやデイズで応える
4代目となる現行型マーチの登場は2010年7月の発売だから、すでに12年が経過している。初代K10マーチは約11年、K11も約11年、K12は約9年と、歴代モデルが長寿であったので、K13の12年目というのは、マーチとしてはさほど珍しいことでもない。
マーチの需要はどうなのか。日産の販売店に尋ねると以下のように返答された。「日産の方針は、マーチを絞り、ノートとノートオーラを充実させる方向だ。ただしノートはe-POWER専用車だから、価格がすべて200万円を超える。150万円以下のコンパクトカーが欲しいお客様に対応できない。そこでお客様が低価格車を希望された時は、軽自動車のデイズを推奨している。ボディはマーチよりも小さいが、車内は広く、設計が新しいこともあって安全装備もデイズの方が充実しているからだ」。
またメーカーの開発者からは「ノートは国内向けの車種として、日本のお客様にターゲットを絞って開発された」という話が聞かれる。この2つのコメントを合わせると、国内の価格の安いコンパクトな車種は、日本向けのノート、ノートオーラ、デイズ、ルークスに任せるとも受け取れる。
特にノートとノートオーラは、車種構成が充実する。ベーシックな仕様はノート、上級タイプはノートオーラ、SUV感覚の車種にはノートオーテッククロスオーバー、スポーツモデルはノートオーラ・ニスモという具合にそろえた。車種を抑えて開発コストと製造コストを低減させながら、グレードは増やして幅広いユーザーに対応している。
そのために2022年上半期(1~6月)の小型/普通車販売ランキングは、1位:ヤリスシリーズ、2位:カローラシリーズ、3位:ルーミー、4位:ノート+ノートオーラであった。ハイブリッド専用車で価格は200万円以上ながらも売れ行きは好調だ。逆にマーチは順位を大幅に下げて、登録台数はノート+ノートオーラのわずか8%に留まった。
また軽自動車のデイズが登場したのは2019年、ルークスは2020年だから設計が大幅に新しい。広い室内、先進的な安全装備、さらにマーチが採用していない運転支援機能のプロパイロットまで用意され、堅調に売られている。
そのために日産が国内で販売する新車の40%近くを軽自動車が占める。今の日産にとって、150万円以下は軽自動車の価格帯になり、マーチは需要を奪われた。これも日産の狙い通りで、幅広いユーザーを数少ない限られた車種でカバーすることにより、車種の削減を効果的に進められる。
以上のようにノート+ノートオーラ+ルークス+デイズがあれば、マーチは用意されていなくても、販売台数を維持する上で大きな問題はない、といえるだろう。
コメント
コメントの使い方マーチを気に入って乗っていたので、買い替え候補としてモデルチェンジを待っていた。
後継車がでないのであれば、日産車ではもう欲しい車はないので、買い替えるのであれば他のメーカーの車種にする。
こういった層も少なからずいたと思うので、顧客を取り逃がしてしまうのではないかなとおもった。