■日本の強みを生かせる分野
なぜCN燃料が国内自動車産業の重要な取り組みであるのか。
その開発は今や世界的な潮流で、そこに日本の製造業の強みを生かせる分野でもあることを理解すべきです。
一国のカーボンニュートラルを実現するには、まずは電源部門の脱炭素が大前提ですが、その構成比はわずか35%です。
より大きな部分は電力外の産業・輸送・家庭部門の脱炭素にあります。
実現には、
1)製品そのもののCN化(=EVシフト)、
2)製造工程のCN化、
3)行動変容や事業構造変革を通じた循環型経済の構築といった活動に加え、
4)カーボンオフセット(森林吸収やJ-クレジットのような炭素削減に応じたクレジット売買)と
5)カーボンリサイクル(炭素を資源と捉えて再利用する技術)を合わせ込まなければ実現できない世界です。
CN燃料とは、まさしくカーボンリサイクル技術を具現化したものであり、2030年をめどにSAF(持続可能な航空燃料)とバイオディーゼルが既存製品と同等のコストに近づき、合成燃料は2040年をめどにガソリン価格に接近できると経済産業省はロードマップ化しています。
■日本が目指すべき戦略
国内ではあまり話題に上がりませんが、ドイツ政府、シーメンス、VWグループのポルシェはチリの国家水素戦略である「Haru Oni(ハルオニ)」合成燃料プロジェクトに出資、注力しています。
2026年までに年間5億5000万Lもの圧倒的な規模を確立し、価格は2ユーロ(約270円)/Lを目指しています。
このハルオニプロジェクトは、国家と企業が凄まじいスケールで仲間づくりを進めていることを象徴しています。
日本は世界の中でも最もEVシフトが遅い国のひとつであることは否定できません。2050年でも約70%の保有車両にはなんらかの形で内燃機関が搭載された姿で残存しています。
EVシフトでCNに接近できる欧州とは事情が異なるわけです。
日本は固有のCNへの道筋があり、既存車両のアップグレード(ハイブリッドをプラグイン、プラグインをEVへ)とカーボンリサイクル燃料といった新技術の組み合わせが不可欠であり、この技術が国際競争力に繋がるわけです。
電池は地産地消、EVは適材適所での生産、国内生産はマルチソリューションという姿こそ、日本が目指すべき電動化戦略だと考えます。
S耐のレースを重ねる度に、取り組みへの理解は進み、仲間づくりは増えています。
マルチソリューションにかけるトヨタを始めとする日本メーカーの執念を感じるものがあります。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
【画像ギャラリー】水素エンジン搭載のカローラスポーツ・GRヤリスとともに、トヨタの「水素エンジン戦略」をチェック!(13枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方カーボンニュートラルにBEVがベストとはそもそも思えないし、21年現状でも、一人8kgもの電子ゴミ(バッテリーや廃棄電子機器)を出している。これはそのまま重大な環境問題になってる
それに更に巨大物であるBEVの大量のバッテリーを追加する、倍増させるのを、なぜ積極的に実行できるのか理解に苦しむ
EVシフトは[情報仕入れず勉強せず他人に流されるけど何かやった気では居たい人たち]の自己満足であり、SDGsに繋がりません。
まともな国が少ないので(国内でも偏向はありますが)、EVシフトに懐疑的というまともな立場の国も少ない、それだけです。
どうしようもなくバカな結果(強制BEVシフト)になったとしても、他の国に社会実験させて現実見て緩くなってからでいいんですよ。