■覆面パトカーとしての存在感も放っていたキザシ
2009年登場のキザシはトヨタカムリやホンダアコードに対して若干ボディサイズは小さいものの、スズキとしては初となる両車などが属するDセグメントカーである。
2.4Lの4気筒エンジンを搭載するキザシはスズキ初のこのクラスのモデルながら、乗ってみればアクセル操作に対するCVTのマネージメントなどによるものだったのか、街乗りでギクシャクすることはあったが、それ以外はスポーティさも備えながら堅実にまとまっており、「改良されればいいクルマに育ちそう」といういい雰囲気を感じた。
しかし、キザシはエクステリアがこのクラスにしては車格感が欠けていたのに加え、それ以上にスズキは前述したSX4 Sクロスの車格でもイメージがないだけに、キザシの存在をアピールすることは非常に難しく、販売は開店休業のような状態だった。
また、そもそもキザシは量産車としては異例の受注生産車と、スズキとしても日本では実験的なモデルとして販売していた感もあった。
一般的にはまったく存在感なく2015年まで販売されたキザシだったが、絶対数は少ないながら2013年あたりからマニアックな形で見ることが増えた。それは白黒カラー、捜査用覆面車というパトカーとしての採用である。
パトカー仕様のキザシはフォグランプなしでシートは革からファブリックにするなど一般仕様とは意外に異なるもので(シートはファブリック仕様を作るコストやパトカーの使われ方を考えると革のままのほうがよかったのでは? という感もあるが)、存在感の極めて薄いキザシは確かに捜査用覆面パトカーに合っていた面も感じる。
しかし、その半面でキザシは超マニアックなモデルだけにクルマ好きでなくとも人によっては目立つモデルとも言え、その点が「捜査用覆面パトカーにふさわしかったのか?」という疑問が残るのもキザシらしいといえばキザシらしいと言えるのかもしれない。
■軽量でクロスオーバー的魅力を備えたイグニス
イグニスはスイフトが軽自動車ベースだった初代モデルの輸出仕様に使われていた車名で、日本では2016年に現行モデルが登場した。
現行イグニスはソリオやクロスビーが採用するプラットフォームを使った、クロスオーバー的な要素を持つコンパクトカーで、現在も販売が続いている。
現行イグニスはサイドウィンドウの傾斜が大きいことによるリアシートの狭さ感や、初期モデルではステアリングフィールが今ひとつといった弱点もあった。
しかし、この2点以外はクロスオーバー的な要素に加え、FF車なら900kgを切るという軽さによる動力性能と燃費の良好なバランス、スバルのアイサイトの型落ちとなるものを使った現在でも通用する性能を持つ自動ブレーキをオプション装着しても約150万円からという価格など、長所もそれなりにあるモデルだ。
現行イグニスの月間販売目標台数は登場時から現在まで1500台で、登場した2016年はクリアしたのだが、翌2017年には目標の半分近く、2018年には目標の3分の1に落ち込み、ここ2年ほどの月間販売台数は月200台ほどと低迷が続いている。
現行イグニスの販売が低迷しているという理由としてはテレビCMをはじめとしたプロモーションを最近見ないのに加え、同じ価格帯で同社のハスラーをはじめとした進化の著しい軽自動車、ヤリスやフィットといった登場時期が新しいコンパクトカーも買えるだけに、大多数の人はイグニスの存在すら知らないままそちらを買うというのが一般的なためだろう。
コメント
コメントの使い方