スズキはコンパクトカーまでのモデルが中心となる自動車メーカーだけに、「売れないクルマには厳しそうな効率を強く重視するメーカー」というイメージがある。
しかし、歴代のスズキ車を見ると、「販売が低調だったわりにはすぐにはなくならず、粘り強く作り続けているモデル」がそれなりにあった。ここではそういったモデルをピックアップしてみた。
文/永田恵一、写真/SUZUKI
■乗る人全員が快適に移動できるSX4と硬質ないいクルマのSクロス
2006年登場のSX4はフィアットとの共同開発車という形で誕生した、エリオの後継車となる欧州的な表現では小さめのCセグメントカーだった。
SX4は1.5Lと2LのNAエンジンを搭載し、バリエーションは5ドアハッチバックと、5ドアハッチバックを最低地上高アップなどによりクロスオーバー化したX系、翌2007年に追加されたセダンに大別された。
SX4は欧州でも販売される世界戦略車だったのに加え、2007年後半のテスト参戦から2008年までという短期間ながらWRCのトップカテゴリーに参戦したモデルでもあった。
それだけに乗ってみれば、動力性能こそごくごく普通ながら、ハンドリングと乗り心地のバランスのよさやX系のユッタリとしたクルマの動きなど、高いドライビングプレジャーを含めて「乗員全員が快適に移動できるクルマ」と好印象だった記憶がある。
しかし、SX4はこのクラスのスズキのモデルに対するイメージの薄さを最大の原因に、約8年間のモデルサイクルで平均すると月300台程度しか売れなかった。
SX4は初代かぎりかと思いきや、2015年にハンガリー生産の輸入車という形で、車名をSX4 Sクロスに改めたコンパクトクロスオーバーにフルモデルチェンジされ、継続された。
1.6L・NAエンジンを搭載したSX4 SクロスもSX4同様動力性能こそごく普通ながら、ハンガリー生産ということもあってかエンジンの回転フィールやシートの座り心地など、全体的に硬質な印象のいいクルマだった。
また、SX4 Sクロスは2017年にグリルを立派なものにするなどの一部仕様変更を行い、2019年にも安全装備の充実といった改良もそれなりに行われていた。
しかし、SX4 SクロスはSX4同様の理由でSX4以上に売れず、2020年末に日本では絶版となった。ただ、SX4 Sクロスは年間販売目標台数が登場時から2017年の一部仕様変更まで600台、2019年に安全装備を充実した際も1200台と非常に少なかったこともあり、それもやむを得えなかったのかもしれない。
むしろ、それ以上にスズキが輸入という比較的投資の少ない方法で自社のミドルクラスカーを日本に導入し、ユーザーの選択肢を増やしていたことを高く評価するべきともいえる。
なお、SX4 Sクロスは欧州で昨年フルモデルチェンジされており、SX4 Sクロスも日本では短期間ラインナップ落ちした後に復活した現行エスクード同様日本に再び導入されるということもあるかもしれない。
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