動画や音楽の配信サービスですっかりお馴染みとなったサブスクリプション。古くは新聞や牛乳の定期購読/定期購入もサブスクの一種だ。
自動車流通の世界にも2020年頃からサブスクの波がやってきた。クルマのサブスクの仕組みや、クルマのサブスクのこれから、そしてクルマ入手方法の主流となりつつある残価設定ローンとの棲み分けを渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、HONDA
■KINTOは戦略的にオトクだが困難も多い
最近はさまざまな業種で、サブスク(サブスクリプションサービス/定額制のサービス)という言葉を頻繁に聞く。大きな影響を与えたのは携帯電話だ。月々の使用料金が定額制で、ユーザーが出費を把握しやすい。
このサービスが普及した結果、若年層を中心に、商品に対する見方も変わった。以前は商品の価格と自分の支払い能力に基づき、「購入できるか否か」を判断したが、今は「毎月いくらなら支払えるか」を考える。価値観が「所有から使用へ」と変わってきた。
その結果、クルマの分野でも、トヨタのKINTOを中心にサブスクが増え始めた。キャンピングカーのサブスクも登場している。平日プランなら、月額2万5000円で、1泊2日を1カ月に最大4回まで使える。4回使えば1泊当たり6250円と安い。
■サブスクは「返却すること」が大前提
乗用車で普及を開始したサブスクの多くは、カーリースの一種だ。税金、自賠責保険料、車検や点検費用は使用料金に含まれ、任意保険まで付帯するサブスクもある。
使用料金以外の出費はほとんど発生しないから、ユーザーはクルマ関連のコストを管理しやすい。個人事業主には、経費の処理が容易になるメリットもある。
サブスクに似たサービスに、残価設定ローンもある。新車を契約する時に数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンだ。例えば3年後の残価が40%なら、残りの60%を返済する。3年を経て契約期間が満了しても、車両は自分の所有にならないが、月々の返済額を抑えられる。
そして契約期間の満了時点で、車両の返却、再びローンを組んで返済を続ける、残価を支払って車両を買い取るという、3つの方法を選べる残価設定ローンが多い。
このうち、車両を返却する場合はサブスクに近付く。毎月ローンを返済しながらクルマを使い、一定期間が経過したら返却するからだ。分割返済するローンとリースでは、本質は異なるが、ユーザーの使用形態は似ている。
その一方、相違点もある。サブスクには、前述のとおり税金、自賠責保険料、点検費用などが含まれるが、残価設定ローンは基本的に別途支払う。このあたりは、借りるのではなく所有するのと同様だ。
また、契約期間が満了した時、残価設定ローンであれば、大半が車両を買い取って自分の所有にできる。しかしリースのサブスクでは、買い取りができず、返却する契約になっているものが多い。あくまでも車両を借りるサービスになるからだ。
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