マットブラックのランクルプラド特別仕様車が完売! 全身黒づくめのSUVはなぜ人気なのか?

■全身黒づくめの特別仕様車はトヨタが力を入れている

2020年7月に欧州トヨタが発表したRAV4ハイブリッドブラックエディション。フロントグリル周りやバンパー、ドアミラーやリアガーニッシュ、スポイラーをオールブラックで仕立て、19インチアルミホイールもブラック
2020年7月に欧州トヨタが発表したRAV4ハイブリッドブラックエディション。フロントグリル周りやバンパー、ドアミラーやリアガーニッシュ、スポイラーをオールブラックで仕立て、19インチアルミホイールもブラック
2020年8月、ランドクルーザー70周年を記念して2021年6月に設定されたランドクルーザープラド TX“Lパッケージ・70th ANNIVERSARY LIMITED”
2020年8月、ランドクルーザー70周年を記念して2021年6月に設定されたランドクルーザープラド TX“Lパッケージ・70th ANNIVERSARY LIMITED”

 全身黒づくめのクルマは、日本車では、実はトヨタが一番力を入れているメーカーだ。

 欧州トヨタが2020年7月に発表したRAV4ハイブリッドの「ブラックエディション」をはじめ、2020年8月にはランドクルーザープラドの70周年記念車、ブラックエディションを発売。ブラックのメッキグリル&ヘッドランプガーニッシュの加飾や専用ブラック塗装の18インチアルミホイールなどを装備。

 続いてトヨタは、6月3日にプリウスの特別仕様車「Aツーリングセレクション」と「Sツーリングセレクション」にブラックエディションを、さらに同4日にC-HR “Mode-Nero Safety Plus II”」を発売した。

 そしてこの8月1日には前述のプラドのTX ”Lパッケージ・Matt Black Edition”に加え、マットブラック塗装とダークスモークメッキナットの18インチアルミホイールを装着したC-HRに特別仕様車 G“Mode-Nero Safety PlusIII”、G-T“Mode-Nero Safety PlusIII”を設定し、8月29日に発売した。

 トヨタは2018年からこうしたブラック仕様をほぼ毎年特別仕様車として登場させているのだ。

2022年8月29日に発売したC-HRの特別仕様車 G“Mode-Nero Safety PlusIII”、G-T“Mode-Nero Safety PlusIII”。特別色イナズマスパーキングブラックガラスフレークを外板色に設定したほか、マットブラック塗装とダークスモークメッキナットの18インチアルミホイール、ブラックエクステンション加飾のBi-Beam LEDヘッドランプを採用
2022年8月29日に発売したC-HRの特別仕様車 G“Mode-Nero Safety PlusIII”、G-T“Mode-Nero Safety PlusIII”。特別色イナズマスパーキングブラックガラスフレークを外板色に設定したほか、マットブラック塗装とダークスモークメッキナットの18インチアルミホイール、ブラックエクステンション加飾のBi-Beam LEDヘッドランプを採用

 また、フリードブラックスタイルや来春に発売予定のZR-Vのブラックスタイル、グリルを精悍なブラックとしたスペーシアベースなど、グリルやアルミホイールなどマットブラックをアクセントとするクルマも流行している。

■フォーマルな場でもOKで存在感あるブラックアウトされたSUVは隠れたニーズに「刺さった」

 真っ黒なSUVが人気の理由を、某外国車のインポーターの営業担当役員に伺ったところ、「アメリカでシークレットサービスやCIA、FBIなどの政府機関が使っている真っ黒なSUVの警護車両がクールでかっこいいイメージがあり、それへの憧れがあるのでは」、とのことだった。

 日本だと、警護対象者が乗るセンチュリーやレクサスLSの前後に随伴している警護車両は、普通のパトカーや黒塗りのレクサスLSやクラウンのセダンが多いが、アメリカでは、シボレーサバーバンやタホなどのSUVが使われるケースが多い。

 筆者が米系金融機関で働いていた頃、NY本社に出張で行ってマンハッタン中心部を移動中に、海外ドラマ24などによく登場するその手の覆面車両の実物をしばしば見かけ、確かにかっこいいのでついつい見入ってしまったことがある。

 一緒にいた9.11も経験したニューヨーカーの同僚に言わせれば「このクルマが停まっているということは近くに要人がいてテロに巻き込まれるリスクが高いから、見とれてないでこの場から早く離れよう」と急かされたのを思い出す。

 トランプ前大統領、バイデン大統領の来日時にも、巨大な大統領専用車「ビースト」の前後を、シークレットサービスの要員が乗る、真っ黒でピカピカに磨き上げられフロントグリルの奥に赤と青のLEDパトライトが仕込まれたシボレーのSUVが前後を固めていた。

●バイデン大統領のエアフォースワンと専用車”ビースト”を振り返る – 自動車情報誌「ベストカー」

 SUVとはいえ黒塗りだと皇居や首相官邸などフォーマルな場でも場違いな感じはしない。

 車列にはアメリカ大使館所有と思われる黒塗りの200系ランクルと現行ランクルプラドも加わっていたが、シボレーと比べればボディサイズの差もあり押し出しはやや弱いものの、同様にフォーマル感と威圧感が感じられ、同じく随伴していた「国産オラオラ系代表」であるアルファードやヴェルファイアがむしろおとなしいクルマのように見えた。

 いわゆる「押し出しの強い」国産のクルマが欲しい人が、こんなシーンをテレビで見ると、「おっ、黒塗りランクルプラドかっこいいじゃん」、となっても全くおかしくない。

レクサスLXグラファイトブラックガラスフレーク
レクサスLXグラファイトブラックガラスフレーク

 国産オラオラ系の頂点に君臨する(?)レクサスLX600の外装色グラファイトブラックガラスフレークと比べると、プラドの特別仕様車は430万円スタートと価格は半分以下でお手頃。

 アルファードやヴェルファイアはもう街で見飽きるほど走っているのに比べ、全身ブラックアウトされたランクルプラドを見ることはあまりなくて新鮮。

 黒づくめでアウトドア感が薄まり、フォーマルな場でも場違いにならずどこにでも乗っていける。押し出しの強さの割には、街中でもギリギリセーフの運転しやすいサイズ感。ゆったりした室内は本革シートが奢られ、3列シート仕様も用意され高級感と実用性も十分。

 今回のランクルプラドのマットブラックエディションは、「他の人とは違う、存在感を感じさせ押し出しの強いクルマが欲しい」という隠れたニーズの「ど真ん中」に突き刺さる、マーケティングリサーチの勝利といってもいいモデルだったようだ。

 アルファードがモデルチェンジされたとしても、上記の条件やニーズを満たす国産SUVに対する需要は必ず残るだろう。

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