■ルーミーが人気を高めた理由
小型車のスーパーハイトワゴンとして、以前からソリオも用意されていたが、スズキは軽自動車が中心のメーカーだ。売れゆきは伸び悩んだが、トヨタは小型/普通車が中心だから、ルーミーもヒット作になった。
ルーミーが人気を高めた機能的な理由は、軽自動車のスーパーハイトワゴンと共通だ。
ボディサイズは全長が3700mm(カスタムは3705mm)、全幅は1670mmとコンパクトで、最小回転半径も4.6m(カスタムG-Tは4.7m)だから小回りの利きもいい。水平基調のボディは視界も優れ、軽自動車並みに運転しやすい。
その一方、全高は1735mmだから、車内が広い。後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、大容量の荷室になるから自転車なども積める。
荷室の最も低い部分の床面地上高は527mmに抑えられ、自転車を積む時も、前輪を大きく持ち上げる必要はない。後席のドアはスライド式だから、開いた時にドアパネルが外側へ大きく張り出さず、狭い場所でも乗り降りしやすい。
そしてルーミーは特に使い勝手に配慮した。収納設備が豊富で、インパネに装着されたカップホルダーには、500mLの紙カップも収まる。荷室の床を反転させると、汚れを落としやすい素材が貼られ、タイヤの汚れた自転車を積んだ後の清掃も簡単だ。
エンジンは直列3気筒1Lだが、軽自動車に比べると、排気量は1.5倍に増える。最高出力は69ps、最大トルクは9.4kg-mで、軽自動車のタントはノーマルエンジンが52ps/6.1kg-mだから、ルーミーの最大トルクは排気量と同じく1.5倍に相当する。ノーマルエンジン車で坂道を登ろうとした時は、ルーミーに余裕がある。
■安全性と割安感も追い風に
また、ルーミーは軽自動車に比べて全幅がワイドだから、カーブを曲がったり、車線を変えたりする時の安定性も自然な印象だ。「小型車のほうが安心」と考えるユーザーは多い。
ルーミーの価格は、最も安い標準ボディのXが、衝突被害軽減ブレーキ、キーフリーシステム、左側スライドドアの電動機能などを標準装着して155万6500円だ。
中級のGは、LEDヘッドランプ、右側スライドドアの電動機能、エアコンのオート機能などを加えて価格は174万3500円になる。
同程度の装備を採用する軽自動車のスーパーハイトワゴンに比べて、15~20万円の価格アップに収まる。税金の安さを重視しない1台だけのクルマを所有する世帯では、ルーミーの魅力が際立った。
ルーミーが2016年に発売された時点では、トヨタブランドの姉妹車としてタンクも用意したが、2020年にトヨタが全店で全車を販売する体制に変わり、タンクを廃止した。
そのために需要がルーミーに集まり、2021年1~6月の登録台数は、前年の約2倍に達した。この時からルーミーの販売にいっそうの弾みが付いて、販売ランキング上位の常連になった。
以上のような経緯により、ルーミーは「トヨタで買える実用的で割安なスーパーハイトワゴン」として人気を高めた。ただし購入時の注意点もある。
■ルーミーを選ぶ上での注意点
まずエンジン、プラットフォーム、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値はパッソと同じだが、車両重量はルーミーが約200kg重く、全高も210mm高い。
基本的なメカニズムはパッソと共通でも、ルーミーはボディが重く背も高いから、小型車では走行安定性に不満を感じる。例えば危険を避ける時などは、ボディが大きく揺り返す。ステアリングの操舵感も曖昧だ。
同様の理由で乗り心地も粗く、エンジンの負荷が大きいから、登坂路ではパワー不足に陥りやすい。3気筒特有のザワザワしたノイズも響く。ターボならパワー不足は解消されるが、2000~3000rpmの実用域で、耳障りなノイズが発生する。
後席は頭上と足元の空間が広いが、床と座面の間隔は不足しており、足を前方へ投げ出す座り方になりやすい。座面の柔軟性も乏しく、座り心地や腰の支え方もよくない。
さまざまな欠点が生じた理由は、ルーミーとその姉妹車を約2年という短期間で開発したからだ。2014年には、先代ハスラーのヒットをきっかけにスズキとダイハツの販売合戦が激化して、国内で新車として売られたクルマの41%が軽自動車になった(2021年は37%)。
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