打倒N-BOX! タントファンクロスで復権なるか!?
そして新たな後追い商品として注目されるのが、タントのファンクロスだ。タントをベースに、フロントマスクにガードバー風のパーツを装着するなど、SUV感覚を強めた。商品の成り立ちはスペーシアギアに近い。販売店では「タントファンクロスの価格は、店頭では2020年9月から明らかにしており、商談も行える」という。
タントがファンクロスを設定した目的は、販売台数を増やすことだが、そこには切実な事情もある。先代型に比べて売れ行きが伸び悩んでいることだ。
過去を振り返ると、先代タントは2013年に発売され、2014年には小型/普通車を含めた国内販売の総合1位になった。2014年における軽自動車届け出台数の上位3車は、1位:タント(1か月平均が約2万台)、2位:N-BOX(約1万5000台)、3位:ワゴンR(約1万4600台)であった。
ところが現行型は、2019年7月の発売直後から伸び悩んだ。2019年8月から12月までは、新型タントを発売した直後の絶好調に売られる時期だが、1か月平均で約1万6000台しか届け出されていない。N-BOXを抜けない状態が続き、2019年11月には軽自動車の販売1位になったが、12月には抜き返されている。スペーシアをも下まわった。
このタントの売れ行きは深刻で、発売された2019年の12月には、モデル末期に設定するような格安な特別仕様車「セレクションシリーズ」を早くも設定している。Xセレクションは、標準ボディのXに360度スーパーUV&IRカットガラスなどを含んだコンフォータブルパックを加えて、価格の上乗せを最小限度に抑えた。
さらに2020年には、Xから一部の装備を取り去って価格を140万8000円に抑えたXスペシャルも加えている。クルマの装備は徹底的なコスト低減によって装着されるから、少ない価格アップで追加装着することは可能だが、カットして価格を下げるのは難しい。従って装備を省いて値下げを行ったXスペシャルは、タントが販売不振に苦しみ、回復方法を模索していた証だ。
タントが売れないワケは地味さが原因!? キャンバスの影響もデカい
タントの販売が低迷する背景には、複数の理由がある。販売店からは「標準ボディのフロントマスクがいまひとつで、先代型と比べた時の変わり映えがしない」という話が聞かれる。
それは機能にも当てはまる。現行型は主力グレードの運転席に、長いスライド機能を装着した。親子が左側のワイドに開くスライドドアから乗り込み、子供を後席左側のチャイルドシートに座らせ、親が降車しないで運転席まで移動できるようにした。使い勝手を向上させる導線を用意したが、いまひとつ地味で、タントを選ぶ有力な理由になり得ない。
またダイハツは2016年に先代ムーヴキャンバスを設定して、2019年には1か月平均で約5700台を販売していた。ムーヴ全体の約55%だから堅調な売れ行きだ。この影響で、ムーヴ販売が滞った可能性もある。ムーヴキャンバスもスライドドアを装着するから、同じダイハツ車のタントと競争になるわけだ。
ちなみにムーヴキャンバスは、全高を1700mm以下に設定して、外観を上質に仕上げた。「スライドドアは欲しいが、極端に天井の高いボディはいらない」と考えるユーザーに好評だ。後追い商品のワゴンRスマイルが2021年8月に登場するまでは、ライバル車も不在で、好調な販売を保って存在感を強めた。ムーヴキャンバスはインパクトが強く、タントの売れ行きにも影響を与えた。
その結果、2022年1~6月の軽自動車販売ランキングでは、タントは前述の通りN-BOXとスペーシアに続く3位になっている。そして軽自動車の販売総数は、ダイハツはスズキを上まわって1位だが、軽乗用車に限ると下まわって2位になる。つまり今のダイハツは、軽商用車が支えているから、軽乗用車はさらに頑張らねばならない。これらの事情によりタントにファンクロスが加わる。
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