ピニンファリーナ×あの社会主義国 近未来車「ヴィンファスト」鮮烈登場の舞台裏

■採用したのはBMWの旧型プラットフォーム

それでは、ヴィンファストのクルマ作りを見ていこう。

初の国産車を作るにあたり、同社は大手自動車メーカーの旧型プラットフォームを譲り受ける形をとった。これは途上国の自動車開発にはよくある手法で、最もコストがかかる車台設計を省略できるという大きなメリットがある。

今回プラットフォームを提供したのは名門BMW。セダン用には旧5シリーズ、SUV用には旧X5のものが使われることになった。

プラットフォームを他社製ですませる代わりに、その上に載るボディのデザインについてはこだわった。

スタイリングの依頼先は、イタリアのピニンファリーナ。同社は最新のデザインテイストを表現すると同時に、「V字形」をモチーフとしたフロントマスクを考案し、「ベトナム生まれ」であることを鮮烈にアピールする端正なエクステリアを提案した。

SUVモデルのLUX SA2.0。こちらは旧型X5のプラットフォームを採用する

エンジンについてはまず、2L、4気筒のガソリンエンジンが最優先された。

このエンジンの開発にあたっては、ドイツの開発支援会社AVLが協力したという。同社はエンジンやトランスミッションのシミュレーション開発を得意としており、これによって実証試験の大幅な短縮が可能となった。

その他、パワートレーンの開発では、吸排気バルブの可変システムについてはボッシュが技術協力を行い、8速トランスミッションはZFが手がけた。4WDのトランスファーはボルクワーナー製。このあたりの提携企業の顔ぶれは、現代のクルマ作りを象徴するような「多国籍ぶり」でもある。

ヴィンファストはドイツのシーメンスと組んで、電動バスの生産も計画している

■2025年までに年間50万台生産を目指す

こうしてヴィンファストは、わずか1年で2台のプロトタイプを完成させ、パリモーターショーでヴェールを脱がせてみせた。1台はセダン型のラックスA2.0、もう1台はSUVのラックスSA2.0。価格は未発表ながら、2019年6月にはベトナム国内で販売を始め、2025年までに年間50万台の生産を目指すという。

正直、ヴィンファストが成功するかどうかは未知数。しかしベトナムの国情が生んだ新たな自動車メーカーには、ぜひ熱いエールを送りたい。

〈ヴィンファストの基本データ〉
創業年:2017年
所在地:ベトナム・ハイフォン
創業者:ジェームス・B・デルーカ(初代CEO/GM副社長)
社名の由来:「ベトナム流」「安全」「イノベーション」「パイオニア」を意味するベトナム語を英語調に並べたもの

〈ヴィンファストの沿革〉
■巨大企業ヴィングループが作ったベトナム初の国産自動車メーカー
■先日のパリモーターショーでセダンとSUVという2台のプロトタイプを発表
■BMWやピニンファリーナなど多彩な提携先との協業体制を実現

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