■ロシアの新車生産はどうなっているのか?
ロシアでは2月末~3月以降、日本や欧州自動車メーカーや部品メーカーが相次いで操業をストップした。さらに、欧州や日本で生産される自動車部品についても輸出供給が原則、ストップするか大幅に制限されている。
ロシアの自動車生産台数(乗用車、小型商用車、トラック、バス)は年間約150万台レベルだが、これが2022年は半減すると予想されている。
ロシア国内の自動車保有台数は4600万台で平均すると1台あたり15年前後使用されるが、しばらくはこの平均寿命も延びていくだろう。そして、日本や欧州メーカーの撤退によって作れなくなってしまった新車だが、ロシアの自動車メーカーは苦肉の策として、「80~90年代の旧車スペック」で新車を生産している。
2022年3月頃にロシアの自動車メーカー数社にメールで取材をした際には、排ガス浄化装置やエアバッグ、ABSなどの装備を除いた仕様で生産している、または6月頃から生産を開始するという返事だった。
その代表的な車種をアフトワズが製造するロシア最大の自動車ブランド「LADA」である。アフトワズは2014年6月にルノー・日産が経営権を取得し、ルノーや日産ブランド、ダットサン車の製造も行われていたが、ロシアのウクライナ侵攻を受け5月にはロシア市場からの全面撤退を発表している(6年以内に事業再開の可能性あり)。
それと入れ替わるように生産が始まったのがLADA「Granta Classic 2022」(ラダ・グラントクラシック2022)に代表されるシンプルなモデルだ。ラダは2021年ロシアで生産されたクルマの2割以上のシェアを持つ最大の乗用車ブランドである。日本では「ラダ・ニーヴァ」が有名で今も多くのファンが存在しており、割と最近まで新車も輸入されていた。
ちなみに、筆者はかつて30年以上前になるが代車で「ラダ・サマーラ」というクルマに数ヵ月間乗っていたことがある。当時、Faia(外国自動車輸入組合)が10台程度輸入したと記憶しているが、あまりにも不人気(故障が多く見た目も悪い)で最後は組合の幹部会社が代車として使っていた。頻繁に故障して何度か通勤ルートである目黒通りを渋滞させてしまった。代車なのに信頼度ほぼゼロというクルマだった。なお、中身は完全に別物だがラダ・サマーらはジャッキー・イクスの運転でパリダカに出場し、入賞した過去もある。
ラダ・グラントクラシック22は現在、ロシアで販売される最も安価なクルマの一つで、エアバッグや排ガス浄化装置、ABSなどの装置、オーディオ類やエアコンも(?)ついていないようだ。経済制裁の影響で電装関係の部品が入手しづらいためロシアとその同盟国が製造した部品のみで作られている。
最後に。この原稿を書いている最中に知人の輸出業者から情報提供があった。その業者によると、
「日本の中古車市場はタマ数が少なく、全般的に相場が上がっていますよね。これ、実はロシアへの中古車輸出が大きく関係しているんですよ。もちろん、新車の生産調整が行われて納車が遅れていることも関係ありますが、それよりもロシア輸出のほうが大きいでしょう。私の周辺では特に人気なのはホンダ車ですね。ステップワゴンやジェイドなどが制裁前に比べると+数10万~100万円前後に値上がりして高値で取引されています。全般的にミニバンやSUVの人気があります。ここぞとばかりに、中古車業者はロシアにどんどん輸出していますよ!」
日本国内の中古車相場が値上がりしているのにはロシアへの中古車輸出が大きく関わっている模様。この状況はまだしばらく続きそうである。
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