日本からロシアへの中古車輸出が激増している。ウクライナ侵攻直後、大幅に減少していた輸出台数は、現在、侵攻前の水準を上回るまでになっているという。
そこで本稿では、ロシア向けを主体とする中古車輸出業者を取材し、ウクライナ危機で激変した中古車輸出の実態を調査。日本国内の中古車相場が値上がりしている裏には、ロシアへの中古車輸出が大きく関係していた!
文/加藤久美子
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■ロシアへの中古車輸出は大盛況!
2022年3月上旬。千葉県木更津港に大量のロシア向け中古車が出港できず港で滞留していたシーンを覚えている方はいらっしゃるだろうか?
ウクライナ侵攻から間もない頃で、ロシアでは日本からの中古車に対する支払いが不安定になり、その関係で日本からロシアに船を出すことができず、日本の港には数千台の中古車がとどまっていたのである。実際それは「中古車輸出台数」の数字にも如実に表れている。以下は、日本中古車輸出業協同組合がまとめた日本→ロシアへの中古車台数のデータである。
■日本からロシアに輸出した中古車台数
●2022年1月:10,415台(前年同月比48.5増。1位ロシア、2位UAE)
●2022年2月:14,808台(同32.1%増。1位ロシア、2位UAE)
●2022年3月:11,477台(同15.9%減。1位UAE、2位ロシア)
●2022年4月:11,208台(同25.3%減。1位ロシア、2位UAE)
●2022年5月:11,630台(同16.8%減。1位UAE、2位ロシア)
3月は2月から3000台以上減少しており、以降、5月までは前年同月比が大幅に減少する状態になっていた。
しかしその後は、
●2022年6月 18,266台(同24.4%増 ロシア1位、UAE 2位)
●2022年7月 18,002台(同30.9% ロシア1位、UAE 2位)
と、6月以降は激増している。いつ頃から、ロシアへの中古車輸出が復活したのだろうか?
ロシア向けを主体とする中古車輸出業者に聞いてみたところ、意外なことが分かった。中古車輸出への制限は3月の終わり頃には元に戻っていたとのこと。
「3月に入ってから中古車輸出に制限がかかっていたり、入金が確認できなかったりなどの理由で日本からロシアへの中古車輸出はストップしていましたが、3月の下旬にはもう規制が解除されています。
その後も600万円(日本円)以上の中古車はぜいたく品とみなされ輸出が禁止されていますが、それ以下は問題なく輸出できています。といっても4~5月いっぱいは、それまで滞留していた中古車の輸出が集中し、ロシア側の受け入れ体制も混乱していました。日本からの中古車が激増し、港でさばききれない状況が続いていたのです。それが戻ってきたのが6月以降ですね。
ちなみに20万円以下は輸出台数にカウントされないので、おそらく、実際にロシアに輸出されている日本からの中古車はもっとたくさんあるでしょうね」。
なお、ロシア国内では新車生産がほとんどできていない状況でまた新車の輸入も少ない状況が続いている。それで、日本からの中古車輸入が想定以上に増えており、ロシアの港ではさばききれない日本車で溢れかえっている。
ロシアの富裕層向けにこれまで台数が少なかった高額車両の輸出も目立っているとのこと。ロシアの富裕層は西側諸国からの制裁(資産の接収など)を恐れてドバイに退避?している例も多い。ドバイ(UAE)は米欧日からロシアへの経済制裁に加わっていないため、ロシアの富裕層が集まっていると考えられる。
日本からロシアに輸送する大型船がロシア向けからドバイ向けに切り替わったことで、ロシア向け輸出の拠点となる富山港では小さめの船で頻繁に輸出を繰り返しているという。
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