かつて、日産の技術力は世界の頂点といってよかった。日産みずからはもちろん、日産ユーザーが愛車のメーカー名を口にするとき、少し冗談めかしながらも誇らしげに「技術の日産」と呼んだものだった。
バブルの崩壊と不況の影響でコスト削減が優先され影を潜めてしまったが、電動化と自動運転の新時代に、その間も培い続けてきた「力」を見せ始めた。「技術の日産」のこれまでとこれからに、自動車評論家 鈴木直也氏がスポットを当てる。
※本稿は2022年8月のものです。
文/鈴木直也、写真/NISSAN、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年9月26日号
■電動化と自動運転の時代に、日産に再びチャンスが巡ってきている
最近の日産の新車攻勢を見ていると、“技術の日産”復活の期待感が膨らんでくる。
思い起こせば、日本車のヴィンテージといわれた1990年前後、ドライビングダイナミクスに関して日産は間違いなく世界の頂点に立っていた。
ところが、バブル崩壊とその後の長期不況で、技術革新よりコストダウンが優先され、いつしか“技術の日産”のイメージは影を潜めてしまう。
その間、燃費最優先の時代をハイブリッドで牽引したトヨタが、日本車の技術革新をリード。業績面でも大差をつけられて今日に至っている。
しかし、100年に一度と言われる自動車の大変革期が、日産に再びチャンスをもたらした。
電動化と自動運転にフォーカスした技術開発の成果が、日産を再び加速させつつある。
21世紀の日産で最もアドバンテージのある技術テーマは、やはりリチウムイオン電池関連だ。
■販売12年・50万台のリーフ バッテリーに起因する火災事故ゼロという信頼性
バッテリーの技術競争というと、CATL、LG、パナソニック、BYDというシェア上位4強に注目が集まるが、日産の強みは長年の実績に裏付けられた信頼性。
2010年12月のデビュー以来、50万台以上のリーフを販売しながら、バッテリーに起因する火災事故ゼロというのは素晴らしい。
この信頼性のカギは、日産がほぼ専用のバッテリーメーカーを持っていること。
現在は中国企業傘下で日産の持株比率は20%に低下したが、「エンビジョンAESC」はもともと日産が育てたと言っていい電池メーカーだ。
EV用バッテリーに関しては、これまで一本調子で伸びてきた量産規模の拡大が、コバルトやリチウムなどの資源制約やコスト低減の頭打ちなどで、現在やや踊り場状態。
規模は小さいが優れた技術を持つ電池メーカーをグループ内に持っているのは、日産の大きな強みといえる。
コメント
コメントの使い方eパワーが売れたといえるのは日本国内だけ。
タイのキックスは月販100台程度と完全に失敗し、ようやっとヨーロッパに投入したキャシュカイeパワーも、販売実績を見る限り人気車ではない。
アメリカや中国ではVCターボを積んだエクストレイル・ローグが販売台数を激減させ、日産が胸を張る「じまんの技術」と顧客の評価は大きく乖離しているというのが現実。
90年代、コストもそうでしたが、なんと言ってもデザインがパッとしなかった。70年代には、セドリック、グロリア、ローレル、スカイライン等、輝かしい車が登場したがその後、それらの車をデザインした方々が次々と退職し、ごく普通のデザイナーがデザインしたのが90年代。やはりデザインは大事。今の日産はいいぞ。