世界的にカーボンニュートラルに向かう中で、ハイパワーターボ+4WDのスーパースポーツは終わりを迎えようとしている。軒並みスポーツモデルの種類が減っていく中で、GT-Rに代表されるスーパースポーツの次世代モデルは、ハイブリッド・スポーツになるのではないかと予想されている。
ハイブリッドによるスポーツモデルはこれまでにも登場しているが、搭載するバッテリーの残量によって性能が変わることや、バッテリーのモーター搭載による重量増がネックになるなどの欠点があった。
しかし技術の進歩によって、これらは克服されようとしている。そこでハイブリッド・スポーツ技術の現時点での完成度とその未来を斎藤聡氏に解説してもらった。
文/斎藤聡、写真/ベストカー編集部
■「ハイブリッド≒低燃費」からの脱却
1999年、トヨタは世界に先駆けてハイブリッドカーの「プリウス」を発表しました。
圧倒的な燃費性能を備え、燃費のいい、環境に優しいクルマとして認知され、北米ではセレブが集まるパーティにロールスロイスやフェラーリではなく、プリウスに乗って参加するといったシーンが見られるようになり話題を集めました。
以来、特に日本国内においてはハイブリッド≒低燃費のエコカーといったイメージが定着しており、メーカーもエコ、環境のための技術といったスタンスでクルマ作りを行ってきました。
ハイブリッドやEVが普及した現在、モーターが単に燃費性能をよくするためだけの機能しかないと思っている人はいないと思います。
特に最近のEVはハイパワーなモーターを使い、モーターが動き出した瞬間に最大トルクを発揮するというモーターならではの特性を使って、力強い加速、あるいはそれ以上に迫力ある加速を発揮させて、ユーザーに対してFUNの部分をくすぐったりしています。
■ハイブリッドをスポーツ走行に使う
モーターの特性にいち早く気づき(たぶんエンジニアの人ならみんな知っていたことなのでしょうが)ハイブリッドに速さを持ち込んだのもトヨタでした。プリウスを発売していたからこそモーターのパワー(トルク)を前面に押し出したクルマを作ることができたのだろうと思います。
車種はレクサスGS450h(2006年)です。296馬力を発揮する3.5LのDOHCターボに200馬力モーターを組み合わせ、システム出力345馬力を発揮していました。その加速感はNOS(ニトロ※)をエンジンに噴射したときのような感覚があって……つまり超絶に速かったわけです。
※酸素含有量の多いNOSを混合気に混ぜることで爆発的な加速力が得られる商品。ワイルド・スピードでおなじみ
ホンダ CR-Zが登場したのは2010年のことでした。このクルマは非力でしたが明確にモーターブーストの効果を意識して作られたクルマです。1.5L・120馬力のエンジンに15kw(20馬力)/78Nmのモーターを組み合わせ、加速のアシストに使っていました。
エコと燃費に使うと思い込んでいたモーターに別の使い方があるということを見せてくれたクルマでした。ただ、バッテリー容量もモーターのパワーも小さかったので、刺激的なスポーツドライブで楽しさを印象付けるところまでは至っていなかったように思います。
ちょうど時を同じくして2010年に日産からフーガのハイブリッドも発売されました。3.5L・DOHC306ps/350Nmを発揮するNAエンジンに、68ps/290Nmのモーターを組み合わせ、システム出力364馬力を発揮していました。その後このハイブリッドシステムはスカイライン(2014年)に転用されます。
コメント
コメントの使い方