加速感超ド級!! 626万円で300psをねじ伏せる!! T-Roc Rの迫力を見逃すな

緩加速は標準のT-Rocと同じだがアクセルを踏み込むと一変!

左右4本出しのマフラーエンドや、19インチの大径ホイール、その内側に見えるブレーキキャリパーなど、T-Roc Rの本気度がうかがえる
左右4本出しのマフラーエンドや、19インチの大径ホイール、その内側に見えるブレーキキャリパーなど、T-Roc Rの本気度がうかがえる

 目の前に現れたT-Roc Rの試乗車は、鮮やかなラピスブルーメタリック色。左右4本出しのマフラーエンドや19インチの大径ホイール、ホイールの内側で光る青いブレーキキャリパーなど、ぱっと見でも「T-Roc R」の高いポテンシャルがうかがえる。

 剛性感と重量感のある運転席ドアを開けると、R専用のナパレザー製ドライバーズシートが目に入る。程よく腰回りをサポートしてくれ、シートクッションも柔らかくて程良い硬さだ。

 R専用の本革ステアリングホイールには、左手の位置に「R」の文字が記された静電タッチ式のスイッチがあり、ステアリングから手を離すことなくモードチェンジが可能だ。

 エンジンをかけると、一瞬、野太いサウンドが聞こえるが、その後は静かに。発進させると、ステアリング特性が軽めで、実に扱いやすいことに気づく。

 T-Roc Rは、ステアリングシステムに、プログレッシブステアリング(操舵角が増えるとギヤレシオがダイレクトに変化する機構)を標準装備するので、駐車場などの小回り性能も良い(Rの最小回転半径は不明だが、標準T-Rocの5.0mに近いはず)。

 また、19インチ40扁平という薄いタイヤにも関わらず、乗り心地に硬さを感じない。段差のショックをフワりと受け止めていなし、まるで17インチタイヤを履いている感覚だ。ダンピングが効いているので、うねりがあるようなシーンでも、ボディモーションがフワつくことがなく、安心感が抜群に高い。

 緩加速で流すようなシーンでは、ベースのT-Rocと同じような加速フィールなので、せっかく210万円も上乗せしたのに、有難みがないような気がさえしてしまうほど、ナチュラルで優しい乗り味であった。

 だが、アクセルを踏み込んでエンジン回転が2500rpmにもなると、様子は一変。「街中では無理」と感じるような加速をする。排気サウンドも変わり、荒々しく太い音質となる。高速道路での合流シーンや料金所ダッシュも、とてつもなく速く、刺激的だ。

 しかも、スポーツカーにありがちな上下に跳ねる嫌な動きがないため、恐怖を感じない。パドルシフトでのシフトダウン時には「ボボボ」というブリッピング音も聞こえ、いかにもスポーツモデルらしい雰囲気に包まれる。走り好きには、これだけでも十分に面白い。

 またドライブモードを最も過激な「レース」にすると、エンジンレスポンスは高まり、シフトチェンジも速まり、可変式ダンパーを最大限に引き締めるモードに。走りを味わおうとしても、速度が出過ぎてしまい、一般道では難しいほど。

 とはいえ、ハイパフォーマンスカーに乗って、涼しい顔して街を流すような使い方だって十分に満足できるだろう。

VWならではのシャシーの造りこみがあってこそ

リアサスを左右剛性の高いマルチリンク式に変更し、300psのパワーに見合うこだわりのシャシー性能を手に入れている
リアサスを左右剛性の高いマルチリンク式に変更し、300psのパワーに見合うこだわりのシャシー性能を手に入れている

 クルマをハイパフォーマンスにするには、過大なパワーに見合うだけのシャシー性能をセットで考える必要がある。

 ハイパフォーマンスを想定していない、一般的なコンパクトSUVをそのままハイパフォーマンスにしてしまうと、シャシー性能が追い付かず、上下方向にフワついたり、小さな段差で跳ねたり、ハイグリップタイヤが発生するコーナリングGにサスが追い付かずにスピンしたりと、不具合が如実に現れてしまう。

 昨今は、ヤリスクロスやキックス、ヴェゼルなど、国産車のコンパクトSUVにも4WDが当たり前になってきたが、シャシーへの対策がおろそかになっている気配が強い。

 横剛性のポテンシャルが低いビーム式リアサスが前提の4WDシステムでは、駆動トルク制御はできても、コーナリング時の横方向の踏ん張りはマルチリンク式リアサスには及ばない。

 その点、T-Roc Rでは、左右剛性の高いマルチリンク式リアサスへと変更し、加えて、上屋の動きを抑える電制ダンパーとハイグリップタイヤ、フルタイム全輪駆動を採用し、対策は万全。制動性能も素晴らしく、安心してブレーキを踏み込める。

 T-Roc Rは、性能にゆとりがあるぶん、ドライバーもゆとりをもってドライビングを楽しむことができる。このようなシャシー性能へのこだわりは、VWの特徴であり、最大の魅力だ。

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