ランエボ生誕30周年から考える「歴代で最もエキサイティングだったランエボ、そして日本のクルマ界にランエボが遺したもの」

■エボVで突然発生的に誕生した「ゼロ・カウンター」走法!

エボXファイナルエディションでサーキットを走行する筆者。4輪ドリフトであるゼロ・カウンター走法はエボVの時点で偶発的に完成したものだったという
エボXファイナルエディションでサーキットを走行する筆者。4輪ドリフトであるゼロ・カウンター走法はエボVの時点で偶発的に完成したものだったという

 その結果、エボVは圧倒的なパフォーマンスアップを果たし、筑波サーキットでのラップタイムをエボIVの1分6秒台から1分4秒台へと一気に向上させることに成功したのだ。

 このエボVが僕にとって最もエキサイティングなエボとなった。

筆者の中谷氏が歴代モデルで最もエキサイティングなエボとして選んだのが歴代初の3ナンバーボディが与えられたエボV(写真はRS)。1998年に登場し、WRCグループAに投入され、シリーズを席巻した
筆者の中谷氏が歴代モデルで最もエキサイティングなエボとして選んだのが歴代初の3ナンバーボディが与えられたエボV(写真はRS)。1998年に登場し、WRCグループAに投入され、シリーズを席巻した

 初めて筑波サーキットを走らせた時、最初の1周目にスーパークロスの5速ミッションは400mしかないバックストレートで5速に入った。通常は3速で入る100Rの最終コーナーを4速で進入すると、リアがスライドし始めたのだが、グリップが高く安定していた。

 すかさずアクセル全開を加えると4輪がパワースライドしながら一定のヨーレートを保ちつつ、カウンターを当てずに最高効率の4輪ドリフト走行(いわゆる「ゼロ・カウンター」走法)が創出されたのだ。

 後に土屋圭市氏がこのゼロ・カウンターを見て、「中谷は何千周も走り込んだに違いない」と語っていたが、実は初テストの最初の1周目に突然発生的に生まれた走法だったのだ。

■1998年のWRCをエボVで完全制覇!

筆者はこのエボV(写真はGSR)でグループN仕様にし、当時のスーパー耐久クラス2カテゴリーで年間チャンピオンに輝いている
筆者はこのエボV(写真はGSR)でグループN仕様にし、当時のスーパー耐久クラス2カテゴリーで年間チャンピオンに輝いている

 このエボVをノーマルに最も近いグループNレース仕様に仕立て、スーパー耐久クラス2カテゴリーにエントリーし、年間チャンピオンを獲得。エボではその後スーパー耐久で50勝した。

 また、WRCでもエボVは圧倒的強さを示し、1998年にマニュファクチャラーズもドライバーズもタイトルを獲得。グループNクラスでも無敵の成績を残したのはアドバイスした身として嬉しかった。

 その後もエボは年々進化し、最終的にはエボXファイナルで完結した。実はエボV開発時にはより多くのアイテムをオーダーしていたが、開発費の制約から年次進化で徐々に投入していくしかなかった。

 ACD(アクティブセンターデフ)やAYC(アクティブヨーコントロール)をレースに投入し、制御や耐久性の進化を試みるよう、僕は強く進言。「S耐制御」という実践的なソフトプログラムを開発した。残念ながら、それはエボにフィードバックされる直前に開発が凍結され、エボXファイナルがラストモデルになってしまった。

2007年に登場したランエボXの最終モデルとなるファイナルエディション(2015年発売)と筆者(写真左端)
2007年に登場したランエボXの最終モデルとなるファイナルエディション(2015年発売)と筆者(写真左端)

 エボXのスタイリングは素晴らしかった。初のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)にローンチコントロールシステムやサーキットモードも取り入れた。時代が少し早すぎたかもしれないが、現代ではスーパースポーツの常識装備となっていることを思うと、三菱が開発を止めてしまったのが本当に残念でならない。

 もし、今エボが復活できるなら、S耐制御をはじめ未投入のメニューがまだ多く残されている。それが実現したら史上最高にエキサイティングなエボを復活させられるのだが……。

【画像ギャラリー】ランエボの開発に深く携わった中谷氏が選んだ歴代で最もエキサイティングだったランエボとは?(24枚)画像ギャラリー

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