速いだけがターボじゃない 乗り味も燃費も大改善? 令和のターボ大解剖

■現在の日本のターボ車の味付け

日産 エクストレイルは「スポーツターボ」、「ダウンサイジング/ミドルサイジングターボ」以外の第3のターボ「発電用ターボ」を採用
日産 エクストレイルは「スポーツターボ」、「ダウンサイジング/ミドルサイジングターボ」以外の第3のターボ「発電用ターボ」を採用

 現在日本で売られているターボ車(軽自動車を除く)はどんなふうに味付けされているのか解説してみたいと思います。

 うんと大雑把かつ強引に分類すると、現在国産車のターボはパワー重視の「スポーツターボ」、そして現在主流の「ダウンサイジング及びミドルサイジングターボ」に大別できると思います。さらに、もしかしたら今後増えてくる可能性がある「発電用ターボ」というのも登場しました。

 この発電用ターボは日産エクストレイルe-Powerに採用されている発電用エンジンで、VCターボと呼ばれるターボエンジンです。VCターボの詳しいシステムは省きますが、圧縮比を8:1~14:1まで任意に変化させることができます。

 エンジンは圧縮比の高いほうが熱効率がいいので、負荷の少ない状況では圧縮比を高くして発電しながら燃費を稼ぎ、パワーが必要な時≒たくさん発電したいときには圧縮比を下げて過給圧を上げてパワーを発揮し発電します。

 このVCターボを使うことで、従来2Lかそれ以上の排気量が必要だったエンジンを1.5Lにサイズダウンし、質量自体もコンパクト化を可能にしたのです。いかに燃費を良くし、かつ効率的に発電するかという点にフォーカスしたターボエンジンの使い方というわけです。

■細々と生き残っているスポーツターボ

新型日産 フェアレディZはスカイライン400Rと同じ3Lツインターボを採用
新型日産 フェアレディZはスカイライン400Rと同じ3Lツインターボを採用

 スポーツターボで現在生き残っているのはGT-R、NSXタイプS、フェアレディZ/スカイライン400R、スープラ、シビックタイプR、GRヤリス、スイフトスポーツです。

 GT-Rのターボはターボのインペラーとハウジングの隙間をゼロクリアランスにするアブレダブルシール採用のIHI製で、過給圧は約1.26kg/平方cm。排気量3.8LのV6ツインターボで最高出力570ps/6800rpm、最大トルク637Nm/3300-5800rpmを発揮します。

 大排気量エンジンにさらに強烈なターボパワーを上乗せした豪快な加速性能を誇ります。

 NSXタイプSは過給圧を従来の105kPaから5.6%過給圧をアップ。1.13kgf/平方cmにアップ。最高出力はエンジンのみで529ps/6500-6850rpm、最大トルク600Nm/2300-6000rpm。

 システム出力は610ps/667Nmを発揮します。これだけの出力を発揮するエンジンだけにターボパワーが炸裂する豪快なエンジンかと思いきや、NAエンジンのようにと言ったら多少大げさですが、右足とエンジン+モーターパワーがシンクロしている超絶に速いけれど扱いやすいパワーユニットです。

 フェアレディZに新しく搭載された3Lツインターボはスカイライン400Rに搭載されているものと基本的に同じものです。ターボ回転センサーによってターボの回転数と過給圧を制御。405ps/475Nmのパワーとトルクを発揮し、レスポンスの良さと迫力あるパワーを両立しています。

 このエンジンとキャラクターがよく似ているのがGRスープラRZの3Lツインターボエンジンで、387ps/500Nmを発揮します。それからSZ-Rの2Lターボもスポーツターボに分類できると思います。258ps/400Nmを発揮して、鋭く伸びのいい加速を見せてくれます。

 シビックタイプRは、国産ターボでもっとも攻撃的なエンジンと言えるかもしれません。端的に言ってしまえば、FF車で世界一ニュルブルクリンク北コースを速く走るために作られた……と言っても過言ではないクルマだからです。

 2Lターボで330ps/420Nmを発揮しますが、パワーをひねり出しているわけではなく、エンジンやターボの応答、フラットなトルク特性まで設計値どおりに作り込まれている、そんな印象のターボです。

 トラクション性能に限界のあるFFスポーツカーをいかに速く走らせるかに心血を注いで作られている過激なエンジンなのです。

ホンダ シビックタイプR。FFスポーツカーを速く走らせるために作られた2Lターボを搭載
ホンダ シビックタイプR。FFスポーツカーを速く走らせるために作られた2Lターボを搭載

 過激という意味ではGRヤリスの1.6Lターボも攻撃的なスポーツエンジンと言えます。出力こそ272馬力ですが、これを1.6Lのエンジンから絞り出しているのですから、チューニング度としてはかなり高めです。セラミックボールベアリングターボを採用し、ターボラグを最小限に抑えています。

 それでもエンジンに比べて大きめのタービンを回している感覚がありパワー重視のターボの匂いがプンプンしています。

 スイフトスポーツは例外的にスポーツターボに組み入れたいエンジンです。1.4L、140馬力はL当たり100馬力で、ターボのチューニング度としてはそれほど高くはありません。

 しかし、ターボの過給圧制御を、常時ウエストゲートを閉じてレスポンスの向上を狙い、過給圧が設定を越えるとウエストゲートが開く、昔ながらのノーマルクローズド制御(最近のターボはポンピングロスを少なくするためウエストゲートを開いているノーマルオープン制御が多いのだそうです)を採用して、昔ながらのレスポンスよくかつ刺激的なパワーを発揮しているのです。

 このほか、レクサス ISやRCの2Lターボもスポーツターボに分類できると思います。

 スイフトスポーツは例外と書きましたが、スポーツターボとダウンサイジング(ミドルサイジング)ターボの区別の目安はリッター当たり120馬力を超えているかどうか、というところに置きました。

 そこに明確な線引きがあるわけではありませんが、実際のところ仕分けてみても、加速の刺激度や迫力、鋭さ、伸びの良さなど、スポーツ性を感じるターボチューンは、このあたりが境界線になっているように感じます。

次ページは : ■スポーツターボ以外のターボ

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