世界で一番EV需要が高い欧州市場で磨き込まれた、最新のEV専用プラットフォームを用いるフォルクスワーゲンの世界戦略BEVのID.4が、ついに日本市場に投入されることになった。
ティーザーサイトはすでにオープン、国内発表のタイミングは2022年内とのことだが、ひと足早く10月7~10日に行われたドイツフェスティバルにて、日本初披露となった。
第一印象は「こりゃ売れる!」。さっそく、どんなクルマなのか、右ハンドルのID.4の実車を徹底チェック!
文/柳川洋
写真/柳川洋、VW、ベストカーweb編集部
■VWのBEV、ID.ファミリーの第二弾がID.4
VWはEV専用のプラットフォーム、MEBを使って生まれた、BEVブランドのID.シリーズ。量産車第一弾は2020年に発売されたCセグメントのハッチバック(ゴルフクラス)のID.3です。
そしてID.シリーズの第二弾が2020年9月に発表され、今回日本で初披露されたSUV、ID.4となります。このID.4もID.3と同様、北米や中国でも2021年から発売されています。
そのほか、ID.ファミリーには、クーペSUVのID.5、スポーツモデルのID.4GTX&ID.5GTXのほか、3列シートSUVのID.6(中国のみ販売)やID.シリーズのフラッグシップ、ID.AEROコンセプト、そして、ミニバンのID.Buzz(日本導入はまだ決まっていないそうです)が存在します。
そのなかで、ID.ファミリーのなかで、日本導入第一弾となるのが、SUVのID.4。さっそく実車を見た印象からお伝えしていきたいと思います。
■EVへの乗り換えに違和感を感じさせない、VWならではのクルマ
初めてID.4の実車を目にして筆者が受けた印象は、「『いいもの』感を強く感じさせ、EVらしさをあえて感じさせない『普通の』高級車のようだな」、というものでした。「いかにもEV」という演出があまりなく、これまでのフォルクスワーゲンのクルマの延長線上にある、真面目で丁寧に作りあげられたクルマ、という感じが強く伝わってきます。価格設定にもよりますが間違いなく売れるでしょう。
ラジエーターグリルが不要なEVにもかかわらず、伝統的な内燃機関車のデザイン文法を踏襲しているように見えるフロントマスク。工作精度の高さが伝わってくる、パネル接合部の隙間の狭さ。ターンインディケーターが内蔵されて奥行きと「目力」を強く感じさせるヘッドライトの造作。ゴルフから乗り換えたとしても、違和感はほとんどないでしょう。
VW特有のサイドのアクセントラインのエッジの鋭さは、クルマに映り込む景色をライン上部と下部ではっきりと分割し、それによりさらにクルマのボリューム感を演出します。ドア下のマットブラックのプラスチックパネルの形状がクルマのサイドビューにくびれを生み出し、ルーフからピラーにつらなるシルバーのアクセントとともにリアにかけての躍動感を生んでいるのもわかります。
また厚みを感じさせるクリア塗装が濃色の外装色の上に乗ることで、ボディパネルの艶に深みが生まれ、なまめかしく、より立体的に見えました。
クルマ後部のデザインも、ややマッチョでかたまり感があり、LEDライトのデザインも特徴的で、街ゆく人の視線を集めそうです。開口部も大きく、VWならではの実用性の高さに対する期待は裏切られないでしょう。
インテリアも高級感たっぷり。タン地のダッシュボード上には、ドライバーの視界に常に入るように白いステッチがあしらわれ、室内でも光を感じさせるグロスブラックのパーツと、グレーのシボの入ったパーツがうまく使い分けられています。
シートはサイドのサポート部分がツヤのあるタンで、座面はアルカンターラ調のグレー地に白いドットで「ID.」と描かれ、3本のステッチがスポーツ感もアピールしています。
リアシートはフロントシートよりやや座面が高くなっており、大面積のパノラマグラスルーフも相まって、後席乗車時の圧迫感を感じさせないような作りになっていました。
また、実際に操作することはできませんでしたが、シフトレバーやパーキングブレーキはデジタルメーターの右側に配置されています。シフトの操作方法もこれまでとは違い、前後方向にひねるアクションになっているようです。「EVならでは」という演出は、クルマに乗り込んでからより強く感じさせよう、という考えなのかもしれません。
フォルクスワーゲングループジャパン・広報・マーケティング本部広報課の山神浩平さんに伺ったところ、ポロやゴルフなど、大人が後部座席に乗っても快適に過ごせるように昔から考えて作られてきたフォルクスワーゲンの伝統にのっとってID.4もデザインされていて、ホイールベースが広く、フラットなバッテリーをフロア部分に収納し、駆動系部品がリアにあるEVだとこれまでの伝統の美点がさらに強く感じられます、ということでした。
総合すると、世界有数の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンが、最新のEV専用のプラットフォームを投入して作った世界戦略車ということで、お値段以上に価値のあるクルマとして仕上げてきているな、と感じました。
内燃機関車のシェアがまだまだ高い日本市場で、保守的な層にもアピールするデザインの高級感あるEVのSUV、それも馴じみのあるフォルクスワーゲンのバッチつき、ということで、「EVに乗ってはみたいんだけど、いきなりテスラはちょっと」、というやや年齢が高い層に突き刺さりそうです。あえて地味めの外装色をイメージカラーとし、先進感は乗り込んでから感じさせる、というのも優れた戦略のように思えました。
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