ウェイクが切り開いた全高限界突破競争の未来 車高はどこまで高くなるのか!?

■伸びしろは0cm/片岡英明

(TEXT/片岡英明)

 日本独自のスモールモビリティが軽自動車だ。最大の特徴はボディサイズと排気量が決められていることである。

全長、全幅、全高のサイズは上の表で紹介されているとおりだが、これを超えると黄色ナンバーの特権はなくなってしまう。

軽自動車の主役は、背の高いハイトワゴンだ。全長と全幅をギリギリまで延ばしているからキャビンを広くするには高さ方向を延ばすしか方法はない。最近はハイトワゴンより背を高くして車内空間を広げたスーパーハイトワゴンも増えてきた。

N-BOXは全高が1780mm、eKスペースとデイズルークスは1775mmである。ブームの火付け役のタントは1750mmだ。そして超ウルトラスペースを売りにして登場したダイハツのウェイクは、なんと1835mmである。商用を強く意識したアトレーと40mmしか違わない。だから室内は驚くほど余裕がある。

ホンダのN-BOXとN-BOXプラス。「N」シリーズの累計販売台数は200万台を突破した(2018年7月)

日産のデイズルークス。平成30年度の自動車アセスメント(JNCAP)の予防安全性能評価において最高評価を獲得している(写真は特別塗装色のプレミアムオリーブ)

キャビンは広く、見晴らしもいい。が、あまり背を高くすると重心が高くなり、操縦安定性が悪化する。トレッドは大幅に広げられないから横風にあおられると心配だ。足回りやボディを強化し、横滑り防止装置などで安定性を高める方法もある。が、コストがかさむ。

また、車両重量が増え、使い勝手の面でも支障が出てくるだろう。軽自動車のユーザーには女性が多いが、リアゲートが高くなることを嫌う人も少なくないはずだ。把手を工夫したり、ストラップなどを取り付ける方法もあるが、これまたコストアップになる。

それまでの生産ラインで作れないとなれば、設備投資は目玉が飛び出るほど高額だろう。ウェイクを超える高さのスーパーハイトワゴンは、当分の間、出てこないと思う。

■伸びしろはビミョ〜/鈴木直也

(TEXT/鈴木直也)

 軽の規格は上で紹介されているとおりだが、背の高さを売りにした初代タントが大成功をおさめたことで、全高は軽自動車に残る“最後のフロンティア”となったわけだ。

ただし、ちょっと考えればわかるとおり、1480mmという軽の最大幅では、全高を上げてゆくとどうしたってプロポーションが不安定になる。全高1750mmのタントあたりでも、縦横比は1対0.84。これを車幅1700mmの5ナンバー車にあてはめると、2mを超える背高ノッポになってしまう。常識的に考えれば、まぁこのあたりが限界と思われていたわけだ。

三菱ekスペース(写真は特別仕様車「ACTIVE GEAR」)

ところが、ダイハツはウェイクでさらに一歩踏み込んで1835mmという全高にチャレンジした。これを同じく5ナンバー車にあてはめると、ぬわんと全高2100mm! 高さはハイエースのミドルルーフで、車幅は180mmも狭いというすごいプロポーションになる。

もちろん、ダイハツだって走行安定性はちゃんと考えているから、見た目からくるイメージほど走りに不安定なところはなく、実用上不安を感じるようなことはない。

スタビの強化やダンパー径のアップなど足回りはかなり贅沢なパーツをおごっているし、重量物をうまくレイアウトするなどして重心高はタントと10mmしか違わない。そういう意味では、万全の手を打っている。

予想を裏切る大ヒットとなったタントの例もあるから、これがユーザーにどう受け止められるかは興味津々なのだが、ボク個人の感覚としては「もう限界では?」というのが正直な印象。

商用バンのハイゼットハイルーフ(1890mm)にかぎりなく近づいちゃったことで、イメージもファミリーカーというよりマルチパーパスカー。ユーザー層の広がりという点では、タントには及ばないんじゃないかと予想します。

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