■軽自動車のスタンダードとなりキャンバスが生まれた
2010年12月には、環境意識の高まりを受け、ガソリン車としての燃費性能を徹底的に追求した5代目が登場する。それまでのムーヴで好評を博してきた、広さや利便性・快適性、基本性能・安全性能などを見直し、これらの能力を高次元にバランスさせた「スペース系軽乗用車の次世代スタンダード」を目指した。
5代目が登場した当時は、低燃費であることが至上とされていたこともあり、新開発「第2世代KFエンジン」の搭載に加え、アイドリングストップシステム「eco IDLE(エコアイドル)」を採用し、約35kgの軽量化を図るなど車体側の燃費対策も徹底。
さらに運転状況を分析し、楽しく低燃費運転に導く「エコ運転支援機能」や、より少ない燃料で目的地に到着する道を案内する「省エネルート探索」を備えたメモリーナビゲーションシステムを採用したことで、27.0km/L(10・15モード燃費)という、ガソリン車としてはトップ(当時)となる低燃費を実現した。
「ビッグキャビン&コンパクトノーズ」を強調した流麗で躍動感のあるモノフォルムシルエットを標準車に採用。これをベースに、大開口のエアロバンパーや厚みのあるフード、丸型4灯式ヘッドランプ、リヤスポイラーなどにより力強い存在感を表現したカスタムもラインアップする。
ラテやコンテとのような派生車種は存在しないが、この5代目はスバルへOEM供給開始され、2代目ステラとして販売されていた。
現行型として現在も販売されている6代目は、「次世代ベストスモール」を目指して開発された。登場は2014年12月である。「新ボディ骨格構造」を採用したのが大きなトピックだが、市場ではN-BOXやタントといったスーパーハイトワゴンが台頭していたこともあり、軽自動車の本質的な価値である低燃費・低価格を真摯に追求し、基本的な能力の向上を図っていた。
エンジンは直列3気筒DOHCエンジンと、直列3気筒DOHCターボの2種類を設定。NA車は31.0km/L、ターボエンジン車はクラストップの27.4km/Lを実現するなど、モーターなどの二次動力を使わずにハイブリッドカーに匹敵する能力を有している。
標準車のムーヴでは、厚みのある造形を採用し、大型のヘッドランプ、グリル、平面ラウンドを強調したバンパー全体で質感の向上を図りながら、サイドはシャープで流れる造形とすることで上質感・安心感を表現。カスタムのほうはスクエアで伸びやかなシルエットや、ダイナミックなウインドウグラフィック、さらにフロント/サイド/リヤに”X”を用いた意匠をあしらうことで、迫力と存在感を主張している。
さらに6代目のカスタムには、ダイハツ車で初めて「パイパー」グレードを設定している。ダークメッキのグリル&ブランドマークで上質感や高級感を演出するとともに、グリル下部とフォグランプまわりにLEDイルミネーションを施すことで存在感がより一層強調されている。
2017年8月に実施したマイナーチェンジでは、ステレオカメラを用いて歩行者にも緊急ブレーキ対応する「スマートアシストIII」や、「パノラマモニター」を採用するなど安全な運転をサポートする機能が強化された。内外装も刷新され、持ち味である先進的で上質感が漂う雰囲気がさらに磨かれている。
ムーヴの名を冠した派生モデルとしては、3車種目となるのが2016年9月に登場したムーヴキャンバスだ。同シリーズとしてはじめてスライドドアを採用したことが大きなトピックで、おおらかでシンプルな丸みのあるシルエットと、こだわりを感じる内外装デザインは女性ユーザーを意識したことは明白。
後席シート下や足もと空間を有効活用できる「置きラクボックス」をはじめ、狭い道でのすれ違い時や見通しの悪い交差点て運転をサポートする「パノラマモニター」など、装備や機能には近年の女性の行動特性に着目したものが多数採用されている。
キャンバスというネーミングは、「CAN=なんでもできる」+「BUS=ミニバスのようなデザイン性」により、暮らしの可能性を広げられるという意味があるようだ。
2022年7月には、ムーヴの派生車種としては初めてフルモデルチェンジを実施して2代目が登場。初代の特徴である愛らしいデザインはそのままに、すっきりと洗練させた「ストライプス」と、上質で落ち着いた世界観の「セオリー」の2タイプが設定された。
置きラクボックスは使い勝手が向上し、両側パワースライドドアにはウェルカムオープン機能を搭載。シートバックユーティリティフックや、保温機能付きカップホルダーの「ホッとカップホルダー」、さらに運転席/助手席シートヒーターなども採用され、これまで以上に女性に寄り添ったクルマに仕上げられた。
全高1700mm以下でスライドドアを備えた軽自動車を求めるニーズはかなり多かったと見られ、後にスズキからワゴンRスマイルというライバル車も登場する。ちなみに初代、2代目ともにプラットフォームとパワートレインはタントをベースにしている。ムーヴ直系ではないが、車名にムーヴを冠していることで販売台数の数字に大きく貢献していることは間違いない。
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ワゴンRとともにハイルーフタイプの人気を二分してきたクルマだけあって、パフォーマンスは折り紙付き。登場から7年が経過した現行型が、現在も軽自動車クラスの第一線に君臨しているのは、基本性能の高さを有しているからであり、それがいくつもの派生車を生み出してきた理由のひとつに挙げられる。
クルマにステータス性を求める人にとっては、軽自動車が愛車になる可能性は低いが、ムーヴに触れてみると「コレもあり」と思わせる魅力を秘めたクルマであることが実感できるはずだ。
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