■日本のマーケット事情は? GT-R専門店を取材
では日本のマーケットはどうなっているのか、都心から小一時間ほどドライブして、GT-Rを専門に扱うショップに実際に足を運んで話を伺ってみた。
「R34 GT-Rの海外オークションが少し弱含んでいるようにも見えるのですが、円安の影響も含め、実際のところはどうなんですか?」
「もう少しすればアメリカで無改造で運転できるようになるのに、慌てて今海外にあるクルマを海外のオークションで売っている、というのはやや訳ありの気がします。だから安く見えるのではないでしょうか。基本的に日本にあるクルマが一番状態がいいと言って間違いないでしょう」。
さらにこう続ける。
「日本では、マーケットが弱くなっている印象は受けないです。V-Spec IIニュルの低走行オリジナル車は、市場価格で5000万円を超えます。また最近ライトニングイエローの10万キロ程度のクルマが国内オークションに出たのですが、こちらも3000万円超えでした。
海外で人気が高いのが、ベイサイドブルー、ミッドナイトパープルIII(見る角度によりパープルとダークブルーの色合いの混じり方が変わる特別塗装)、ライトニングイエロー、アクティブレッドなどの派手目の外装色で、高値で取引される傾向があります。逆にホワイト、ブラックなどは海外より日本で人気です」。
確かに、最近海外のオークションで高値がつかなかったものはホワイト、シルバーなどが多かった。
「円安とインバウンド解禁もやはり影響があります。インバウンド解禁以降、大体週に3、4件、海外のお客様が実際にショップにお見えになっています。先週、R33のGT-Rを即決され、また来日するときにはR34も買うかも、と言って帰られたアジアのお客様もいらっしゃいました。
程度がよく低走行のホワイトのV-Specより、やや程度が荒れたベイサイドブルーのノーマルグレードが高値で海外に買われていったりするのを見ると、本当にGT-Rやクルマを愛している人が買っているわけではないのでは、と悲しくなります。そういった見せびらかし目的で買う人たちは、25年ルール解禁とともに多くのR34 GT-Rがストリートを走り始めたら、飽きて売ってしまうかもしれません。
それでマーケットが崩れるかですが、20年前に生産終了となり、11600台弱しか造られなかったクルマですから、クオリティの高い個体の値段は下がることはないと思います」。
そう伺うと、webには載せておらず、店頭に来た客だけにチラ見せしているという、走行4万キロでオリジナルコンディションのV-Specベイサイドブルー、お値段3000万円台後半、という1台を見せてもらったが、割と真剣に欲しくなってしまった。
「円安で値段が上がっているか、と言われるともちろん影響はありますが、いい個体に関しては高値安定、という感じでそこまで実感はないです。自分の手で日本のお客さんに売って、そのお客さんがうちにメンテも任せてくれて、手放す時にまたうちに売ってもらう、という流れで長く1台のクルマと付き合っていくほうが、高値で海外に売ってしまってそれっきり、となるよりも店としては経営も安定しますのでありがたいです。だから、GT-Rを愛するショップの多くは、短期的な視点でできるだけ海外の買い手に高値で売り抜ける、ということをしたくないというのもあるかもしれません」。
円安という外部要因や、長期保有者に懲罰的な税制のせいで、R34 GT-Rのような「日本の宝」がどんどん海外流出する可能性が高まっているなかで、こういった心あるショップがあることがわかっただけでも、取材できてよかった、と筆者は思うのであった。
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