■これぞ日本の庶民が胸を熱くした最後のモデル!
私は、458イタリアに試乗して、「いつか必ず手に入れたい!」と願った。新車価格は2830万円。庶民には猛烈にハードルが高かったが、このクルマを買わずには死ねない! よし、中古車が2000万円を切ったら買おう! そう決意した。
その日は意外と早くやってきた。2012年、30年近い付き合いの中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』にて、黄色の458イタリアを、総額2580万円で購入したのだ。この時は512TRからの乗り換えで、追い金が1500万円以上だったので、人生で初めて自動車ローンも組んだ。自分としては、天上界を掴むような感覚だった。
私が458イタリアを買ったことに対して、周囲の反応は物凄かった。「まさか!」「信じられない」「凄すぎます」等、想像を絶するほど絶賛された。当時のクルマ好きの多くが、458イタリアのデザインに憧れていたし、その走りの凄さも伝え聞いており、知り合いが憧れのアイドルと結婚したくらいの感覚で、祝福してくれた。
仮に今、私が296GTBを買ったとしても、こんな反応はまったく期待できない。たしかに296GTBは素晴らしいクルマだが、富裕層を除けば、クルマ好きですらフェラーリのニューモデルへの関心を失っている。
その背景には、日本経済の低迷やスーパーカーブーマーの高齢化があるが、もはや時代は「速さ」にロマンを抱くことを許さなくなったし、我々の側も無意味に感じるようになった。富裕層を除いて。時代の移り変わりを考えると、458イタリアは、日本の庶民が最後に胸を熱くしたフェラーリだったのではないだろうか。
458イタリアは、2015年、ターボ化された488GTBにモデルチェンジ。デザインも、伝統的にフェラーリをデザインしてきた名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」の手を離れ、フェラーリの内製となった。つまり458イタリアは、最後のV8自然吸気エンジンを搭載したフェラーリであり、最後のピニンファリーナデザインのピッコロフェラーリとなった。
私は当時、「458イタリアは、必ず名車として歴史にその名を刻むだろう」と確信した。甲高いフェラーリサウンドを失ったターボの488GTBなんて、まったく欲しくなかった。
■「最後の……」が影響して今も高値で流通
2017年、私が458イタリアを手放して新たに手に入れたのは、1989年製の328GTSだった。458イタリアを最後に、もはや新しいフェラーリに欲望を刺激されることはなく、古いほうがはるかに魅力的に思えたのだ。
458から488へのモデルチェンジ当時、458オーナーの富裕層はこぞって488に買い替え、中古市場には458が100台以上も溢れた。供給過剰により、「このままだと必ず暴落する」という状況だった。
が、458イタリアの中古価格は、そこからゆるやかに上昇に転じた。現在の平均価格は3000万円強。私が購入した10年前より500万円ほど上がっているし、より新しい488GTBの平均価格もわずかに上回っている。今後、この差はどんどん開いていくだろう。なぜなら458イタリアは、最後のV8自然吸気フェラーリであり、最後のピニンファリーナ・フェラーリだからだ。
ちなみに、458ベースのスペシャルモデルである「458スペチアーレ」は、7000万円以上の値を付けているが、個人的には、7000万円の458スペチアーレよりも、3000万円の458イタリアに大きな魅力を感じる。クラシックフェラーリに軸足を移した私だが、今でも458イタリアを見ると心がときめく。
すでにかなり値上がりしてしまった458イタリアだが、3000万円前後という価格は、今のスーパーカーの新車と比べればかなり安いし、走るヨロコビはずっと大きいと確信する。
【画像ギャラリー】名車・フェラーリ458イタリアを写真で見る!(7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方