■トヨタと同じく「数で勝負」に出たGM
GMはトヨタと似たところがあって、EVも「数を売ってこそ環境対策になる」というスタンス。
まずはボルトで普及価格帯EVを開拓。今回のモーターショーでは、その次の段階として「売れ線車種」をEV化。エキノックス、ブレーザー、シルバラードの3車種にEV仕様を投入している。
このなかで、シルバラードはコロナ禍でも年間50万台以上売れてるアメリカ名物のベストセラートラックで、その1〜2割でもEV化に成功したらすぐ10万台スケール。
また、エキノックスはコロナ前までは年間30万台以上売れていたベストセラーSUVで、ここにはエントリー3万ドル台のEV仕様を用意するのだという。
半導体不足や電池の調達など難しい問題はあるが、それが克服できればGMのEV戦略は侮れない。
あれほど売れているイメージのあるテスラモデル3だって、アメリカ市場に限っていえばピークの2020年で20万台ちょい。そうなれば充分射程距離に入るわけだ。
実は、大騒ぎしているわりにはアメリカのEV普及率が低く、全米販売台数の比率では約6%程度。
ロサンゼルスへ行くとテスラがわんさか走っているんで勘違いしがちだが、内陸部ではEVを見かける比率は日本と大して変わらない。
各メーカーとも、バイデン大統領が用意してくれた補助金を足がかりにEVビジネスのテイクオフを狙っているのだが、補助金は「掛ける台数」だから数の勝負。
GMの戦略はこのあたりが強かだと感じたね。
■フォードもEVで態勢を作るも売るものがなし……
一方のフォードは、マスタング・マッハEとF-150ライトニングがEV戦略の持ち玉だ。
マッハEはエントリー価格5万ドル以下と思ったより安いせいか、西海岸はもちろん内陸部でもちょこちょこ見かけるし、F-150はコロナ禍の去年でも年間72万台を売るバケモノ。
これも1〜2割ほどEVバージョンが売れたら凄いボリュームになる。
ただ、フォードのEV戦略はGMより先行していたものの、半導体不足が直撃してバックオーダーの列が延びている状況。
これはフォードに限ったことではないが、各メーカーとも補助金は欲しいけれど売るタマがなしというジレンマに悩まされている。
補助金を取ってゆくには、今すぐ顧客にデリバリーできるEVが必須なわけで、絵に描いた餅じゃダメなんよという空気を感じたね。
■そして注目のガソリン車。内燃機関は死せず!
というわけで「EV祭り」は前評判どおり盛り上がっていたわけだが、忘れちゃいけないのは自動車メーカーにとって明日のメシ代を稼いでくれるのは、従来のエンジン車という現実だ。
デトロイト3にとってそれはビッグなトラックとマッスルカーなわけで、フォードはプレスデイ初日の夜に第7世代マスタングのフルモデルチェンジを発表。
クライスラーも300Cのマイナーチェンジで対抗するなど、ばりばり内燃機関オンリーのクルマもEVに負けず元気なところを見せている。
面白いのは、オフロード系SUVを使ったユーザー体験コーナーが充実していることで、ジープやブロンコが遊園地なみのスケールで急登坂やモーグルのコースを走り回って観客をきゃーきゃー言わせている。
プレスよりも来場する一般ユーザー向けに、いろいろ趣向を凝らした仕掛けを考えているあたりに、デトロイト3の本音が見えるような気がしたね。
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