コイツは「アルファードイーター」か!? GMビュイックGL8は日本でも売れる?

■現在でも好調なアメリカンSUV

悪路向けの本格派SUVとして世界的におなじみのジープ ラングラー
悪路向けの本格派SUVとして世界的におなじみのジープ ラングラー

 話をアメリカンブランドのSUVとミニバンに戻すと、後者は2000年代にアストロが終了しており、欧州を含めて、輸入ミニバン自体が大幅に減った。

 しかし、SUVは健在だ。特に最近はジープブランドが注目され、2021年には1万4271台を登録している。

 正規輸入車の販売ランキングでも、先に挙げた5位のBMWミニ、6位のボルボに続いて、ジープが7位に入った。2010年のジープの登録台数は1877台だったから、約10年間で日本国内の売れゆきを7倍以上に増やした。

 ジープブランドのなかでも特に販売の好調な車種が、悪路向けSUVのラングラーだ。2021年の登録台数は、メルセデスベンツAクラスを上まわり、VWポロに迫る勢いだった。

 ジープラングラーが人気を得た背景には、ふたつの理由がある。ひとつはSUVの原点回帰だ。最近のSUVでは、ヤリスクロスやハリアーのような前輪駆動をベースにしたシティ派が圧倒的に増えて、SUVの原点となる悪路向けの車種が見直された。そのために日本車でもジムニーやランドクルーザーが人気を高めた。

 ふたつ目の理由は、国内市場におけるアメリカンブランドのイメージや魅力が、約50年前から本質的に変わっていないことだ。要は作りが少し粗くても、外観が大胆なデザインで存在感の強いクルマが好まれる。

 運転感覚も、低回転域で高い駆動力が沸き上がるエンジンがアメリカンブランドらしさだ。逆に上質で緻密な作り込み、吹き上がりのいいエンジンなどが欲しいならドイツ車を選ぶ。

 そのためにキャデラックも、今ではエスカレードを頂点とするSUVが4車種をそろえ、セダンで輸入されるのはCT5のみになった。

■存在感はアメリカン・アルファード!? 中国で人気のビュイック GL8

中国で積極的に販売され、2022年11月には新型も発表されたGMビュイック GL8
中国で積極的に販売され、2022年11月には新型も発表されたGMビュイック GL8

 そうなるとアメリカンブランドの人気を高めるなら、やはりSUVやミニバンを輸入するのがいい。必ずしも北米市場で販売している必要はなく、中国やASEAN市場で売られるアメリカンブランドでも構わない。

 例えば、中国で積極的に販売されるGMのビュイックブランドには、SUVやセダンと併せて、GL6とGL8というミニバンもある。この内、GL8はアルファードによく似たフロントマスクを備えるLサイズミニバンで、後席側のドアはスライド式だ。日本のミニバンに近い成り立ちを備える。

 GL8のボディサイズは、全長が5119mm、全幅は1878mm、全高は1799mmとされ、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も3088mmと長い。

 アルファードに比べると、全長は約170mm、ホイールベースも約90mm上回る。全幅も約30mmワイドだが、全高は約140mm低い。つまり全高は、かつてホンダが販売していたエリシオンと同程度だ。今でも中国で売られているオデッセイやエリシオンに近い。

 GL8のエンジンは直列4気筒2Lターボで、48Vのマイルドハイブリッドを組み合わせる。ATは9速タイプだ。

■もしもGL8が日本で販売されたら……

 日本のLサイズミニバンでは外観の見栄えが重視されるから、全高が1800mmを下回ると売れゆきを伸ばすのは難しい。国内版のオデッセイが廃止され、エルグランドが販売を低迷させた背景にも、天井の低さがある。

 ちなみに、クルマ本来の機能としては、必要な室内高と最低地上高が確保されるなら、天井と床は低いほど好ましい。乗降性、低重心による走行安定性と乗り心地、空気抵抗の低減に基づく低燃費など、機能が幅広く向上するからだ。

 しかし、ミニバンやSUVの場合は、天井を低く抑えたことで外観の存在感や車内の見晴らしが薄れ、売れゆきを下げることもある。ここがミニバン開発の難しさで、アルファードは、機能よりも売ることを優先させたクルマ作りによりヒット商品となった。

 この点を考慮すると、GL8をそのまま輸入しても好調に販売するのは難しいが、将来的にミニバンやSUVにより、ビュイックなどのアメリカンブランドが復活したら楽しいだろう。ジープブランドの売れゆきが7倍以上に増えたのだから、不可能ではない。アメリカンブランドが日本の市場を諦めるのはまだ早い。

【画像ギャラリー】日本の「キング・オブ・高級ミニバン」!! トヨタ アルファード&ヴェルファイア(8枚)画像ギャラリー

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!