エネオス・ホールディング(以下エネオス)は去る11月2日、千葉県船橋市のガソリンスタンド「船橋卸団地TS」で販売したレギュラーガソリンにディーゼル(軽油)が混入していたと発表。
ガソリンは10月31日午後2時37分から11月1日午前8時14分にかけて163台に給油されたが、今のところエネオスに車両の不具合に関する連絡はないとしている。
なぜこんなことが起きたのか? 防ぎようがないのか? そしてガソリン車に軽油、ディーゼル車にガソリンを入れたらどうなるのか?
文/岩尾信哉
写真/ベストカーWeb編集部、AdobeStock(トップ画像=kawa10@AdobeStock)
■前代未聞!! プロのスタッフがまさかのミス
ちなみにエネオスが発表したプレスリリースから原因の説明を抜粋すると……
「原因は、当該SSで10月31日(月)に実施したレギュラーガソリンタンクへの荷卸しの際、燃料油輸送会社の手違いにより、誤って軽油を荷卸ししたことによるものです。
軽油が混入したレギュラーガソリンを使用することで、車両の走行不良、最悪の場合、エンジン停止に至る可能性がございます。ENEOS製品の品質に対する信頼を損なう事態が発生したことを厳粛に受け止め、深くお詫び申し上げます」
とある。
セルフサービスのガソリンスタンドにおいて、ユーザーがガソリンと軽油を入れ間違えるというのは耳にする話。だが、燃料輸送会社が店舗のガソリンの貯蔵タンクに誤って軽油を入れてしまうという事例はさすがに聞いたことがない。
少なくとも日々燃料の輸送業務に携わっているプロのスタッフが、燃料を取り違えて燃料タンクに入れ間違えるという作業ミスは、申し訳ないが前代未聞に近いだろう。エネオス側もしっかりとしたプレスリリースを発表したことを考えても、滅多にないとはいえ事の重大さに配慮してのことだろう。
それでは、実際にガソリン車に軽油、ディーゼル車にガソリンを入れた場合に、どのような問題が起こりうるのか、基本的な部分から類推してみたい。
■異なるガソリンと軽油の燃料特性
軽くおさらいしておけば、化石燃料は石油と天然ガスに分別され、原油から精製されるガソリンと軽油では、沸点(気化する温度)など性状が異なる。ガソリンの沸点は30~180℃、軽油の沸点は240℃~350℃となり、この範囲で原油から留出される。
それぞれの特性を説明すると、ガソリンは常温常圧の状態でも蒸発しやすく(揮発性が高く)燃焼しやすい。いっぽう軽油は沸点がガソリンに比べて高いなど、高温高圧の状況下で燃焼することを意味している。さらに軽油はガソリンよりも熱効率が高いという特徴がある。
内燃機関としてガソリンエンジンとディーゼルエンジンの構造と燃焼方式が異なるのは、ガソリンと軽油の特性に関係している。ガソリンエンジンは燃料であるガソリンと空気をシリンダー内で混合させて圧縮、点火プラグの火花によって着火、燃焼させる。
対して、ディーゼルエンジンは空気だけを圧縮して高温高圧に達した際に、軽油をシリンダー内へ噴射して自然着火させる。ディーゼルエンジンでの燃焼はガソリンエンジンに比べて高圧・高温にする必要があるため、ディーゼルエンジンは構造的により強固であることが要求される。
沸点が低いことから引火性が高いのがガソリンの特徴であり、対する軽油は圧縮された際の着火性が高く、熱効率の高さ、すなわち燃費の良さに繋がっている。
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