■「ヘルメット着用は任意」となっているわけ
少し踏み込んで説明すると、そもそもは、国が新しいビジネスのシーズ(種)を見つけようと、「規制のサンドボックス」と言われる実証試験に2019年から電動キックボードを加えたことが始まりだ。
それが2020年になり、産業競争力強化法という形になって、国として電動キックボードのシェアリングビジネスを行うベンチャー企業を支援するようになった。
ここでいう”産業競争力”とは、日本がさまざまな産業で海外に対して負けないための競争力を指す。
その実証試験で、ベンチャー企業側から「海外での電動キックボードシェアリング事例を考慮して、日本でもヘルメット着用を任意にして欲しい」という要望が出た。
結果的に、現在も全国各地で行われている電動キックボードの実証試験では、最高速度を時速15kmとして「ヘルメット着用は任意」となっているのだ。
今回、事故で死亡した男性も、この実証試験でのサービスを使っていた。
だから、ノーヘルでも交通違反扱いにならないのだ。
■電動キックボードはアメリカで発達
では、海外での電動キックボード事情はどうなっているのか?
最も早く普及が進んだのはアメリカだ。早いといっても、大手シェアリング事業者のLimeやBirdが2017年から2018年にかけて事業を初めており、それからまだ4~5年しか経っていない新しいビジネス領域だ。
こうしたベンチャーがカリフォルニア州でサービスを始めて、多少の時間差があって全米各地に事業展開し、これと同時にさまざまな電動キックボードのシェアリング事業者が誕生した。
ここでアメリカ特有の事態が起きる。州、または市や郡(カウンティ)によって電動キックボードに関する道路交通法の内容が違うのだ。
アメリカでは、州のDMV(運輸局)が道路交通法に関する独自の考えを持っており、自動車免許の取得可能年齢にも差がある。
電動キックボードについても使用可能な最低年齢には差があり、多くの場合は16歳以上だが、州によっては14歳や15歳というケースもあり、なかでもミシガン州などでは12歳となっているなど、違いがある。
また、通行区分についても、車道走行はNGで自転車専用道だけといったケースが多いが、これは州運輸局のみならず、市や郡によるさまざまなローカルルールが存在するからだ。
ヘルメット着用についても、州や地域によって考え方に多少の違いがあるが、これまでの事故事例を鑑みて、着用を強く推奨するとしているケースが多いようだ。
■各国で異なるヘルメット着用義務の有無
このほかの諸外国での電動キックボード事情については、警察庁が取りまとめた資料によると、ヘルメット着用については違いがある。
具体的には、英国では義務はなくて推奨。フランスでは都市部では義務はなく推奨だが、都市部以外では義務。ドイツでは義務はなく推奨。そして韓国では義務化として未着用の場合は罰金を導入予定としている。
電動キックボードはさまざまな国や地域にとって新しい乗り物であり、日本でもこれから事故事例や社会状況の変化を踏まえて、ヘルメット着用や使用年齢についてさらなる議論が進むべきだと思う。
そのうえで、使用条件や使用場所でのローカルルールも必要になるはずだ。
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