昨シーズンも各地で発生した、大雪によるクルマの立ち往生。気象庁が2022年11月に発表した3か月予報では、この冬は冬型の気圧配置が強まりやすくなるため、西日本や東日本の日本海側では雪が多くなる、とのこと。特に年末年始など、移動が増える時期には、大雪によるクルマの立ち往生が発生しやすく、注意が必要です。
クルマの立ち往生は、いったん発生してしまうと、雪が降っている間は状況の好転は難しく、場合によっては、何時間もクルマの中で過ごさなくてはならないことにも。もちろん、厳しい寒さとなる夜も、クルマの中。室内であるクルマの中は、それほど寒くならないのでは、と思えますが、極寒の夜は、エンジン停止後数時間で、車内温度が氷点下まで下がってしまうこともあります。厳冬期にやむを得ず車中泊をしなければならないときに気を付けるべきポイントと、備えておくべきものをご紹介します。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ mario beauregard
写真:Adobe Stock、写真AC
エンジンオフから1時間後には15度も低下
大雪によって、チェーン未装着車両がスタックしてしまったり、周辺の交通が停滞したことによる交通集中、事故などによって、クルマが立ち往生してしまう事例が近年多くなっています。ガソリン車(ハイブリッド車含む)は一酸化炭素中毒を防ぐために、バッテリーEVは電力消費を抑えるために、立ち往生してしまった際はできる限りエンジンを停止させる必要がありますが、大雪が降るなか、エンジンを停止させたクルマの車内の寒さは想像以上。JAFの実験によると、外気温が約マイナス10度、車内温度が25度の場合、エンジンを切った1時間後には約10度に、3時間後にはなんと氷点下にまで下がったそう。
このまま長時間過ごすと「低体温症」となり、さらに体温が下がれば、足に十分な血液が流れなくなる「末梢循環不全」に陥る危険も。悪化すれば足に潰瘍ができたり壊死したりする、恐ろしい事態です。

対策なしでは、3時間も耐えられない
JAFは、雪による立ち往生を想定した、極寒のなかに止めた車内で、一晩過ごす際の対策について検証。実験が行われたのは2014年2月、場所は長野県、時間帯は午後11時から翌午前7時。同じダウンジャケットを着て、下はジーンズで統一した4人のモニターが、それぞれ違った寒さ対策を行い、エンジンを切った車内でどこまで耐えられるか、という内容で行われました。寒さ対策は、
・対策なし
・毛布と使い捨てカイロ
・冬山用の寝袋
・エマージェンシーシート(薄くて軽いアルミシート)
の4つ。2台のテスト車両(トヨタ ヴェルファイア)に2人ずつ分かれて乗り込み、午後11時実験開始。実験開始時の外気温はマイナス10.2度、車内温度は25度(2台とも)だったそう。
その結果、実験開始から2時間45分が経過した、午前1時45分に、「対策なし」のモニターが、ギブアップ。足先の感覚がなくなってきていたそうです。この時の車内温度はなんと1.8度だったそう(外気温はマイナス11.1度)。また、「エマージェンシーシート」のモニターも、午前4時27分にギブアップ。このときの車内温度はマイナス3.9度(外気温はマイナス12度)にまで低下していたそうです。エマージェンシーシートは、通気性がないことから、当初汗をかいたそうで、それが冷えることでも寒さにつながったようです。
残る2人のモニターは午前7時の実験終了まで耐えることができたようですが、寝袋のモニターは「朝方がきつかった」とし、毛布+使い捨てカイロのモニターは、「カイロに助けられた」とのこと。実験終了時の車内温度は、マイナス7度(外気温はマイナス12.9度)だったそうです。
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