■MT導入は歓迎だが、ふたつの心配なポイントあり
クルマは電動化や自動運転にシフトしている真っ最中だが、そんななかMTは真逆の存在かもしれない。だが、筆者が考えているのはMTはクルマの原点とも言える「自分の操作で自由の移動する喜び」を改めて見直すという意味でも、今後もなくなってはいけない機構のひとつだ。
かつてスバルはMT比率が日本車のなかでNo.1だったが、現在はBRZのみと言う状況である。そんななか、WRX S4へのMT追加の情報はスバルファンには吉報だろう。しかし、筆者は嬉しい半面、心配事もいくつかある。
ひとつ目がパワートレーンのスペックの問題だ。日本向けWRX S4に搭載される水平対向2.4L直噴ターボ(FA24 DIT)は275ps/375Nmだが、北米向けWRXの6速MTモデルは同じFA24 DITながらも275ps/350Nmと最大トルクが異なっている。その理由は6速MTで、北米向けWRXに搭載される6速MTの「TY75」は許容トルクが350Nmのため、それ以上のトルクアップが厳しい……。
もちろん、クルマはスペックだけで語ってはいけないが、2ペダルモデルより低いスペックでは商品性はちょっと辛いところがある。そもそも先代WRX STIは308ps/440Nmだったので、その“代わり”にはならない。となると、TY75に大きくメスを入れる必要があるが、「台数を考えると費用対効果は?」というビジネスライクな話になってしまう。
ちなみにスバルはもうひとつ6速MTを持つ。WRX STI用の「TY85」で許容トルクはTY75の倍となる700Nm。「だったら、TY85を使えば解決でしょ!!」と言いたいところだが、TY85はモータースポーツユースまで考慮したスペックなので、大きく重いうえにノイズや抵抗も多い。つまり、現状のFA24 DITと組み合わせるには「過剰スペック」なのだ。
ふたつ目が「衝突被害軽減ブレーキの義務化」の問題だ。適用は国産車の新型車が2021年11月より、継続生産車が2025年12月(軽トラックは2027年9月)となっている。北米向けWRXの6速MTモデルにはアイサイトは未装着だが、日本に導入するには装着はマスト。
ただ、スバルのラインナップには「MT×アイサイト」は存在しない。開発者に聞くと技術的にはハードルはないそうだが、「台数が出ないと商売にならない」と言う大きな課題が……。ただ、スバルBRZ/GR86のMTにはいずれ装着しなければならないので、開発が進んでいることを期待したい。
■STI製コンプリートカーでもOK!
このように“課題”ばかり挙げてしまったが、個人的にはWRX S4×6速MTの追加は大歓迎である。当然、スバルの開発陣はこれらの問題は筆者以上によくわかっているはずなので、すべてクリアさせて発売してくれるに違いない。
ちなみに国産のスポーツモデルを見ると、6速MTのGRヤリスやホンダのシビック タイプRは好調なセールスを記録している。となると、WRX S4もその仲間に入ってほしい、いや入らなければダメだろう。
個人的な希望を言うと、295ps/390Nmくらいに出力アップしたFA24 DITに、シフトフィールや操作性などに手が入った改良版6速MT (TY85)の組み合わせであれば、みんなハッピーになってくれるかな? と思っている。仮にスバルで厳しいのならば、STI扱いのコンプリートカーでもいいので。
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