2年連続リーマン級の危機が襲うなかで…… 23年の自動車業界はどうなるのか?

■2023年の自動車業界を読み解く3点

 2023年は以下の3点に注目です。

 第1に、新車の販売台数は世界的な不況の懸念を跳ね返し、3%程度の成長が見込まれます。

 景気後退期に新車台数が伸びるという新たなパラドックスが起こるのですが、これは景気後退に伴う需要の後退速度より、新車供給の回復速度のほうが早いために起こる現象です。特に、米国は前年比8%増、日本は7%増加が期待されます。

 第2に、年中盤までにはトヨタの新EV戦略の方向性が示されるでしょう。

 e-TNGAの改良方法、新開発EV専用プラットフォームの導入前倒し、車載蓄電池調達の新ルート確立などが考えられます。

 戦略のつまずきが表面化したことはショックでしたが、早期に気づくことで多くの学びを得ることができました。EVの戦いは長期に渡るため、2030年までには充分に挽回が可能とみています。

 伝統的な内燃機関での経験則だけでは通用しないことを痛感し、EVビジネスの難しさを強く認識する出来事であったのです。

 成功体験によるものづくりへの自信過剰は禁物。新興ビジネスに対して柔軟な対応力とスキルを持つことの重要さを学んだわけです。

 国内自動車産業の国際競争力は、EVシフトの流れのなかで大きく後退しかねないとの警鐘が鳴らされたと捉えるべきです。

2023年中盤には、トヨタの新たなEV戦略の方向性が打ち出されるだろう
2023年中盤には、トヨタの新たなEV戦略の方向性が打ち出されるだろう

■CASE2.0への移行

 第3に、2023年は自動車のデジタル革命を表すCASEのステージが、バージョン1.0から2.0に向けて加速すると考えられます。

 CASE1.0では、クルマが提供する価値が「所有」から「利活用」のモビリティサービスに移行することで、自動車の販売と保有構造に多大な変革を生み出す、いわゆる「モビリティトランスフォーメーション(MX)」が世界観の中心にありました。

 CASE2.0では、地政学的変化とコロナパンデミック下におけるニューノーマルの掛け算が、「GX(グリーントランスフォーメーション)」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という2つのメガトレンドを形成し、「MX」「GX」「DX」の同時進行が予想されます。

 GXとはカーボンニュートラルなどの持続可能な社会の実現を目指す取り組みであり、DXはデジタル技術を浸透させて、人々の生活をよりよいものへ変革させることを意味します。

 100年に一度の自動車産業の大変革は人々の移動と生活を豊かにし、持続可能な社会との両立を実現する基盤となっていくでしょう。

 CASE2.0の最も具体的なショーケースが2023年のジャパンモビリティショーであり、ウーブンシティの概要の具体化にあると考えています。

●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数

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