ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。
第十四回目となる今回は、未曾有の事態が続くなかで、2023年の自動車業界は果たしてどうなるのか? その展望を読み解く。
※本稿は2022年12月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年1月26日号
■2022年に起こった3つの重要な事象
2023年はジャパンモビリティショー(JMS)の幕開け、2024年に開場を控えたウーブンシティの概要発表、トヨタの新EV戦略の方向性など多くの新展開を迎えそうです。
2022年を振り返りつつ、2023年の自動車産業を先読みします。
2022年は以下の3つの重要な事象が起こりました。
第1に、ウクライナ戦争、上海ロックダウン、半導体不足などのサプライチェーンの寸断を受けて、新車減産が続いたことです。
トヨタの生産台数は、2021年度は150万台、2022年度も160万台もの大減産で、同社の歴史のなかで、このような大減産は過去にアジア危機とリーマンショックの2度しか記憶にありません。
リーマン級の危機が2年連続で襲ったことに等しいのです。
第2に、2022年は歴史的なコスト高が自動車産業を襲いました。
原材料、輸送費/エネルギー、サプライヤー値上げを含めたコスト高は、出荷1台当たり実に15万円に達しています。
その40%程度は欧米市場での値上げで部分的に吸収されましたが、国内では値上げを控え、コストと価格のギャップをメーカーが受け止めた格好となっています。
第3は、トヨタのEV戦略のつまずきが表面化したことです。
2021年末に打ち出されたトヨタのEV戦略は、出だしからつまずきを経験しているようです。
第1弾となった「bZ4X」は車両/電池コストの高さ、走行性能や充電体験など長期的な競争力を確保できるのか、トヨタ自身が悩んでいる様子が窺えます。
加えて、米国で施行されたインフレ抑制法案(EV現地生産と中国調達の排除)は同社の大誤算のひとつとなりました。
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