海自の新鋭護衛艦「もがみ」型はどこが新しい? 高効率で速いを実現する新システム

■軍艦のさまざまな推進方式

 「もがみ」型の特徴のなかでも、特筆すべき点は、推進方式だろう。海上自衛隊の護衛艦では初めてCODAG方式を採用している。この推進方式はアメリカ海軍のLCS(沿岸海域戦闘艦)やドイツ海軍のザクセン級フリゲートなどでも使用されている。

 軍艦にはさまざまな推進方式があり、CODAGもそのひとつである。ここでは軍艦に搭載される主機(エンジン)と推進方式について解説してみたい。

 軍艦を動かす主機(エンジン)には、ガスタービン、蒸気タービン、ディーゼル、原子力(これを使用しているのはアメリカのみ)がある。ガスタービンが出現する以前は蒸気タービンとディーゼルが一般的だった。

 蒸気タービンを使った動力機関は、船を動かすための動力として多用されてきた。蒸気タービン機関はボイラーでお湯を沸かして発生した蒸気によりタービンを回転させ、その回転力でスクリュー・プロペラを動かして推進する方式だ。それはディーゼル機関と比べて重量が軽く、大出力が出せるという利点があるからだ。反面、燃料消費が多いという欠点もあるが、高出力が必要とされる大型船、特に軍艦の推進機関に向いている。

 ディーゼル機関は、ディーゼルエンジンのシリンダー内部で燃料を燃焼させたガスでピストンを上下動(往復運動)させ、それを円運動に変え、減速機を介して適切な回転速度にすることで、スクリューを回転させる。

 いっぽう、今日の軍艦ではガスタービン機関(重量に対し出力の高い航空機転用ガスタービンエンジンを使った動力機関)が最も一般的である。ガスタービンエンジンは、圧縮した空気と燃料を混合して燃焼させ、発生したガスでタービンを回転させる。ただし、回転数が高すぎるため減速機を組み合わせ、スクリューを回転させる。

 現代の軍艦の主機としてガスタービンが多いのは高出力が出せるので高速航行が可能になるからだ。足の速さが必要な駆逐艦のような軍艦では重要なことである。また信頼性の高さも軍艦にとっては重要だ。 

■効率と速度を両立する複合推進方式

 いっぽう、異なる主機を組み合わせ、巡航時と高速航行時で使い分けたり、あるいは併用したりすることで、より効率的に軍艦を運用できるようにしたのが複合推進方式である。「もがみ」型は、先にも書いたとおり、海上自衛隊の護衛艦では初めてCODAG方式を採用している。

ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせたCODAG方式
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせたCODAG方式

船舶用複合推進方式(1)……ディーゼルとガスタービンを組み合わせた機械駆動の推進方式

 軍艦の複合推進方式にはCODAG、COGAGなどの略号が使用されるが、これらは船の推進方式で使用されている主機の組み合わせを示している。複合推進方式は、ディーゼルエンジンやガスタービンエンジンを組み合わせることで効率的な航行を行えるようにしたもの。それらを大まかに解説すると以下のようなものがある。

・CODAD(COmbined Diesel And Diesel)
同種あるいは異なるディーゼルエンジンを組み合わせた方式で、ひとつの推進軸に対して高速航行用のディーゼルと巡航用のディーゼルが接合されている。巡航時は巡航用ディーゼル、高速航行時は巡航用と高速用ディーゼルを併用する。

・CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせた推進方式で、巡航時はディーゼルを使い、急加速や高速航行時にはガスタービンを併用する。航続距離や加速性能と速度性能を向上させることができるが、高速回転のガスタービンと回転数が低いディーゼルを推進軸に接合するための減速機(ギアボックス)が複雑になる。海上自衛隊の「もがみ」型、アメリカ海軍のLCSなどで使用。

・COGAG(COmbined Gas turbine And Gas turbine)
異なるガスタービンを組み合わせた方式で、ひとつの推進軸に対して高速航行用のガスタービンと巡航用のガスタービンが接合されている(同機種を2基接合する場合もある)。巡航時は巡航用ガスタービン、高速航行時は巡航用と高速用ガスタービンを併用する。航続距離や加速性能と速度性能を向上させることができる。海上自衛隊の「こんごう」型や「あたご」型のミサイル搭載護衛艦、「いずも」型ヘリコプター搭載護衛艦などで使用。

・CODOG(COmbined Diesel Or Gas turbine )
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせた推進方式で、低速・巡航時はディーゼル、高速航行時はガスタービンに切り替える方式。エンジンと推進軸を接合する減速機がCODAGよりも簡単な構造で済むという利点がある。海上自衛隊の「ゆうばり」型や「あぶくま」型護衛艦で使用。

・COGOG(COmbined Gas turbine or Gas turbine)
異なる種類のガスタービンを組み合わせた方式で、巡航時には巡航用ガスタービン、急加速や高速航行では高速用ガスタービンに切り替える。CODOGと同様にどちらかのエンジンしか使用しないので一方はデッドウエイトになる。海上自衛隊の「はつゆき」型護衛艦やイギリス海軍の42型駆逐艦などで使用。

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