海自の新鋭護衛艦「もがみ」型はどこが新しい? 高効率で速いを実現する新システム

■電動モーターを組み合わせた推進方式

 比較的に新しい複合推進方式で、従来のディーゼルやガスタービンと電動モーターを組み合わせたものでハイブリッド推進システムとも呼ばれる。自動車でいうハイブリッド車のようなもの。大まかに分類すると以下のようになる。

●船舶用複合推進方式(2)……電動モーターを組み合わせた推進方式

・CODLAG(COmbined Diesel -eLectric And Gas turbine)
低速および巡航時はディーゼルで発電機を回し発生した電気で推進用の電動モーターを稼動させ(ディーゼル・エレクトリック方式の電気推進)、高速航行時には推進軸に機械的にガスタービンを接合する方式。電気推進により低速および巡航時の燃費効率を上げ、航続距離を伸ばすことができる。イギリス海軍の23型フリゲートやドイツ海軍のバーデン・ヴェルテンベルク級フリゲートなどで使用。

・CODLOG(COmbined Diesel -eLectric or Gas turbine)
低速および巡航時はディーゼル・エレクトリック方式の電気推進だが、高速航行時にはガスタービンによる機械駆動に切り替える方式。アメリカ海軍のアメリカ級強襲揚陸艦やフランス海軍のアキテーヌ級駆逐艦などで使用。

・COGLAG(COmbined Gas turbine-eLectric And Gas turbine)
低速および巡航時はガスタービンで発電機を回し発生した電気で推進用の電動モーターを稼動させ(ターボ・エレクトリック方式の電気推進)、高速航行時には推進軸に機械的に別のガスタービンを接合する方式。CODLAGと同じ長所を持つが、もともと燃費の悪いガスタービンの欠点を補える。海上自衛隊の「まや」型護衛艦や「あさひ」型護衛艦(2代目)などに使用されている。

COGLAG方式を採用する「まや」型(写真/海上自衛隊)
COGLAG方式を採用する「まや」型(写真/海上自衛隊)

■砕氷艦「しらせ」に使われる電気推進方式

 2000年代に入って使用されるようになっているのが電気推進機関。主機の電動モーター(電動機)を回転させ、スクリュー・プロペラなどの推進器を駆動させる方式である。ガスタービンやディーゼルで発電機を回し、発生させた電力で電動モーターを回す。そのためガスタービンやディーゼルのような内燃機関は船の推進には直接関係しない。電気推進はプロペラの回転方向や回転数を簡単に変えられるため操縦性能が良く(細かい操船が行える)、振動が少ないなどのメリットがあるが、装置自体が大きくなり製造コストや運用コストが高くなるというデメリットがある。

 とはいえ今日の船舶(特に軍艦)は電子装置の塊であり、艦内で消費される電力も膨大なものになる。そのため推進用と艦内の機器用の電力を共有化することができる電気推進方式のメリットは大きい。また内燃機関を使用する機械的な推進システムに比べ燃料を節約でき、艦内スペースに余裕を持たせることができるというメリットもある。将来的には軍艦も民間の船舶も電気推進方式が主流になって行くと思われる。なお、電気推進機関にはIEP、IFEPがある。

●電気推進方式……電動モーターのみ

・IEP(Integrated Electric Propulsion:統合電気推進)
ガスタービンやディーゼルで発電機を回し、発生させた電力で電動モーターを駆動させるもので、推進用と艦内用の電力を発生させる発電機が統合されている。海上自衛隊の「しらせ」型砕氷船やアメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦に使用されている。IPS(Integrated Power System)とも呼ばれる。

発電用エンジンと電気モーターの組み合わせとなるIEP
発電用エンジンと電気モーターの組み合わせとなるIEP

・IFEP(Integrated Full-Electric Propulsion:統合全電気推進) 
CODLAGやCODLOGのように機械駆動の推進装置を併用せず、電気推進のみで推進する方式。イギリス海軍の45型駆逐艦やクイーン・エリザベス級航空母艦などで使用されている。基本的にはIEPのひとつである。

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