スバルのAWDはなぜこれほど信頼されているのか?

■高性能に見合ったAWDシステムを用意

スバルのAWDは、車種の性格や動力性能に応じてメカニズムを使い分けている。採用車種が最も多いのは、先に挙げたアクティブトルクスプリットAWDだが、高性能な2Lターボエンジンを搭載するWRX S4、レヴォーグ2.0GT-Sアイサイトと2.0STIスポーツアイサイトには、VTD-AWDを搭載する。

さまざまなAWDシステムを持つのもスバルの強み。高性能車には高性能車ならではのAWDシステムが用意される。写真はWRX S4

VTD-AWDは高い駆動力にも対応できるセンターデフ式で、前輪のトルク配分率を45%、後輪は55%とした。後輪の駆動力を増やすことで、峠道などをスポーティに走っても旋回軌跡を拡大させにくい。カーブを曲がる時も、ステアリングの操作に応じて確実に回り込む。雪道のような滑りやすい場所では、アクセル操作によって車両の挙動をコントロールしやすい。

電子制御式油圧多板クラッチを使うLSDも装着した。滑りやすい場所では、LSDがセンターデフの差動を制限して前後の駆動系を直結状態に近づけるなど、前後輪の駆動力配分を綿密に行って最適な走行性能を確保する。高出力にも対応して駆動力の伝達効率が優れ、運転の楽しさも味わえるから、WRX・S4やレヴォーグの大切な特徴になった。

そしてスポーツAWDとして究極的に高い性能を発揮するのが、マルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)式AWDだ。このシステムは高性能車のために開発され、6速MT専用のAWDになる。

これはWRX STIのみが搭載している。

世界的に超激戦区である2Lターボスポーツ市場のなかでも抜きんでた存在感を持つWRX STI。その根幹を支えているのがスバルのAWD技術

マルチモードDCCD式AWDの基本メカニズムは、WRX S4などが搭載するVTD-AWDと同様のセンターデフ式だ。トルク配分率は前輪が41%、後輪が59%とされ、VTD-AWDに比べると後輪の駆動力配分をさらに増やした。アクセル操作による車両挙動のコントロール性も一層向上している。

そして最も特徴的な機能が、DCCD、つまりドライバーがセンターデフの差動制限力を積極的にコントロールできることだ。

マニュアルモードを使うと、電子制御式油圧多板クラッチによるLSDの差動制限力が、フリー(差動制限をほとんどしない状態)からロック(前後の駆動系を直結に近付けた状態)まで、6段階に調節できる。フリーの状態では車両の向きを変えやすく、後輪に59%の駆動力が配分されるから、アクセル操作次第では高出力を生かして後輪を横滑りさせながらカーブを小さく回り込める。

逆にロックでは駆動力の伝達効率が高まり、悪路も安定して走破できる。ドライバーが路面の状態や走行パターンに応じて、センターデフの差動制限力を自由に選べる。

このほか車両側の判断で走行状態に応じた最適な差動制限を行うオートモード、差動制限力を弱めたフリーに近いオートマイナスモード、差動制限力を強めてロックに近づけたオートプラスモードも設定した。

マルチモードDCCD式AWDを搭載するWRX・STIは、モータースポーツのベース車として積極的に使われ、高強度鋳造ピストン、強化エンジンマウント、大型インタークーラーなども備える。いわば実戦向けのスポーツモデルで、マルチモードDCCD式AWDも、過酷な用途に対応できる高性能と耐久性を秘めている。

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