■アフィーラの評価はふたつに分かれる
SDVを実現するためにはクルマの抜本的な構造をOSレベルから再設計し、土台となる電子プラットフォームから物理的なプラットフォームまでを一新することになります。
クルマのアーキテクチャはスマートフォンのような構造に変わり、アプリケーションを経由してさまざまなサービスを得られるサービス指向の製品に進化していきます。
その先には、SDVがスマートモビリティとスマートホーム、スマートシティなどの社会インフラとの相互データ連携を実現する未来があります。
そのSDVを実現しようとしているのが、ソニー・ホンダモビリティがCESで発表した「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプです。
やや張りぼて感がぬぐえなかったビジョンS(2020年公開)と比較して、建付けのよいしっかりとしたプロトタイプに進化していることを実感しました。
「無垢」という言葉がぴったりのシンプルなエクステリアとインテリアをあえて採用し、その中心にドンと映画やゲームのエンタメを重視したパノラミックスクリーンが位置します。
エクステリアはかなり実車に近いイメージではないかと思います。一方、提供される顧客体験(CX)にはエンタメ以外の目新しい打ち出し感が乏しく、魅力が今ひとつわかりづらいところもあるようです。
合弁設立からわずか1年でここまで来たと評価するか、発売まであと3年でこの程度しかできていないと批判するかの意見は割れるところではないでしょうか。
アフィーラのコンセプトである3つの「A」、Autonomy(自律性)、Augmentation(身体・時空間の拡張)、Affinity(協調)のうち、はっきりと見えたのはレベル2+から3で運用する「自律性」の部分だけ。
このブランドの勝負どころである「身体・時空間の拡張」に関しては、手の内をほとんど明かしていないように見えます。
ソニーが得意とする時空間の拡張、ホンダが得意とする身体の拡張をこの先3年間でどこまで具現化できるのか、興味が尽きないのです。
SDVへのアプローチは、IT企業らしい飛び道具的なSDVもあれば、メルセデスやBMWが目指す伝統的自動車メーカーならではの安心・安全重視のSDVも生まれてくるでしょう。
ソニー・ホンダモビリティの面白さとは、IT企業と伝統的自動車メーカーのいいとこ取りを実現できるところだと考えています。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
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