2115年まで有料維持って本気か? 「高速道路無料化」の事実上撤回に思うこと

■必要悪だった「無料化打ち出し」の騙し討ち

日本の新しい動脈となった新東名の必要性はユーザー誰しもが認めるところだろう(w_p_o@AdobeStock)
日本の新しい動脈となった新東名の必要性はユーザー誰しもが認めるところだろう(w_p_o@AdobeStock)

 だからあえて、老朽化による維持費の増大は無視して、2050年に無料化という結論を出した。確信犯の騙し討ちだが、国民を騙さなければ民営化も高速道路の建設続行も実現しなかった。

 私は、あの騙し討ちは、必要悪だったと思っている。

 そもそも、欧米諸国の多くで高速道路が無料なのに、なぜ日本の高速は有料で、しかも世界一高いのか? その答えは、主に次のふたつである。

理由その1)建設を始めた1960年代、日本はまだ世界銀行から融資を受ける発展途上国で、手元資金がなかった。

理由その2)日本の地形は、欧米に比べるとはるかに険しく、地盤も軟弱で、そのうえ世界一地震が多く、地価も高いため、建設単価が2倍強に跳ね上がり、維持費もかさむ。

 政府が建設速度を優先するため、有料道路制度を取ったのは致し方なかったのではないか。有料自体が誤りだったとしても、今さらやり直しは効かない。現状を受け入れつつ、ベストな道を選択する以外にない。

■今後はどのようにしていくべきなのか?

混雑する幹線の高速道路は永久に有料化にし、交通量の少ない地方の過疎路線を無料化するのがベストだと筆者は指摘する(beeboys@AdobeStock)
混雑する幹線の高速道路は永久に有料化にし、交通量の少ない地方の過疎路線を無料化するのがベストだと筆者は指摘する(beeboys@AdobeStock)

 では、今後歩むべきベストな道とはどんなものか。

 半永久的な有料化はしかたないが、現状維持がベストではない。私見だが、有料道路制度を維持しつつ、より合理的でメリハリの利いた、路線ごとの料金水準に変更すべきだ。

 日本の大都市は、欧米や中国と異なり、ほぼ一直線上にある。東名や名神などの幹線に、どうしても交通が集中する構造なのである。首都高や阪神高速などの都市高速を含め、幹線を無料にしたら交通集中でどうにもならなくなる。そこは永久に有料でいいし、無料にしたらむしろデメリットが大きい。

 しかし、地方の過疎路線は、無料にしても渋滞が起きる気遣いはないし、地域経済の活性化にも寄与する。そういった路線は無料、あるいは現在の半額といった料金水準に引き下げるべきだ。

■一律永久有料化より一部を無料にし、幹線は半永久的に有料化が落としどころか?

 交通量の少ない路線の料金を下げても、もともと料金収入が少ないのだから、借金返済への影響はごく小さい。半永久的に有料にすれば、借金返済の期限がなくなるのだから、多少の値下げはまったく問題にならなくなる。一律永久有料化ではなく、一部を無料にしつつ、幹線は半永久的に有料化するのが、経済合理性が高い方策だ。

 道路公団民営化によって、高速道路の建設・維持に関してはかなりのコストダウンが実現し、借金は順調に返済されている。ただ、老朽化に追いかけられているため、今後維持費はどうしても膨らむ。お金をかけなければ、古い路線から順に廃止せざるを得ず、永久有料化はやむを得ない。

 しかし、地域ごとの経済的な片寄りを考えると、全国一律料金であることがそもそも不合理なのである。

【画像ギャラリー】高速道路無料化の事実上撤回は致し方なかったのか?(3枚)画像ギャラリー

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